Get Wildとキャッツアイは別に関係ない。の巻

案の定、次の日飲み過ぎでダウンしてますた。すんません。


ということで
今日はめっちゃむずかちぃことを書き連ねます。


司法試験の出題予想を勝手に検討しよう!
今日は、そんな企画となっております。
といっても、めちゃくちゃ身近なお話でもある。


テーマは、カラオケに始まり、それから20年以上という年月を経て、今年の1月27日にテレビ局10社の敗訴を言い渡した事件(ロクラク事件)へとつながる。そんな物語。



その物語とは、すなわち


カラオケ法理のファイナルファンタジー


となっております。



ところで、
小室兄さんの作曲したGet Wildは名曲でございますね。あすふぁ〜ると〜タイヤを…
そんなGet Wildでございますが、これは小室兄さんの所属音楽会社に著作権が譲渡されているわけです。何回も言いますが、小室のお兄さんに他人に売れる高価な著作権はございません。
もっとも、著作権が消滅したわけではなく、この権利は音楽会社のものなわけです。


したがって、Get Wildという音楽の著作物の利用に関して、注意しなければ著作権侵害となって訴えられる可能性がございます。
例えば、多摩地区周辺なんかでお客を集めて、Get Wildを演奏してお金儲けするなんてことをしたら、著作権の1つ演奏権侵害、すなわち著作権侵害となるわけです。損害賠償責任に止まらず刑事罰も受ける可能性があります。注意しましょう。
つまり

①公に
②演奏すること

以上の2つの条件を満たすと、原則、演奏権侵害ということになります。


演奏権といっても演奏すべてが侵害となるわけじゃござーません。「公に」向けた演奏が適用対象となっております。自分の家のトイレででっかいのしながらでっかい声でシャウトしてもOK牧場ということになっております。
ゆえに、本来ならばGet Wildという音楽の著作物を利用する行為(演奏)に関しては、著作権者に許諾を得る必要がござーます。


もっとも、仮にこの2つの条件に該当する場合でも、それだけで即「著作権侵害=違法」となるわけじゃござーません。
著作権法には権利制限という例外的な抜け道があるのですよ。これに該当すると、「非侵害=適法」となるので覚えておきましょう。


シティーハンターのEDテーマとしてすでに公表済のGet Wildは、一定の条件で「公に」向けて演奏しても大丈夫なのです。その条件は著作権法38条1項に定められた条件です。
その条件とは、

①非営利かつ聴衆から料金を受けないこと
②出演者が無報酬で演奏

というものです。


例えば、文化祭でクラスの出し物としてGet Wildを演奏しようということになると、だいたい数百人規模の学生さんらに向けて演奏するということになるので、「公に」という要件を満たしてしまい、トイレでシャウトするのとはひと味違って、このままでは演奏権侵害となってしまいます。下手すると牢屋でシャウトすることになってしまいます。公教育上、法を犯してまでGet Wildをみんなで歌うことはよろしくありません。


しかし、文化祭の出し物としてなら、この権利制限の規定が適用されるので、著作権侵害にならない。そういう仕組となっております。
ちなみに、聴衆から料金を受けないことが条件ですが、「実費」程度なら受けてもよいということになってます。つまり

実費≠料金

こういうことです。
したがって、アマチュアバンドで活動している場合も、金儲けできるような大物じゃない限りGet Wildを歌って行っても著作権侵害じゃない。そういう世の中になっています。Get Wild様々なわけで。

著作権(演奏権)侵害のまとめ】

演奏権という著作権侵害を理由に損害賠償請求とかする場合の要件は

1演奏権該当性
 ①公に、②演奏した
2権利制限にひっかからないこと
 ①非営利かつ聴衆から料金を受けないこと
 ②出演者が無報酬で演奏
 ③利用した音楽が公表済
という①②③すべて満たして、権利主張の制限にひっかからないこと
→どれか1つでも欠ければ請求OKということ

で、本題に入ろう。


これはシティーハンターではなく、クラブキャッツアイという名のスナックで本当にあった事件である。ちなみに作者の北条司(本名、十条嘉男)は一切無関係である。

当時昭和52年。クラブキャッツアイでは、カラオケテープでカラオケしていたスナックで、もっぱらお客がカラオケしていたいたって普通のスナックなわけ。このクラブキャッツアイが著作権侵害で訴えられた。そんなお話。

クラブキャッツアイは、演奏権侵害で訴えられた。
まず演奏権侵害といえるためには、「公に」向けて演奏することが必要である。
知らない客にも歌を聴かせるという意味では、不特定多数の者に向けてなされた演奏といえるので、「公に」向けてなされたといえなくもない。
もっとも、お客は金儲けで歌っているわけではない。むしろ客としてお金を払う側なわけです。ゆえに、
①非営利かつ聴衆から料金を受けないこと、②出演者が無報酬で演奏
という条件を満たすので権利制限の規定が適用される。
結果、お客は著作権侵害として責任を問われることはない。こんなことで責任を問われたらスナックで歌う客は皆無となってしまうので、よかったですねオヤジどもっ!!!!


しかし、クラブキャッツアイはお金儲けの手段の1つとしてカラオケという方法を採用しているわけです。
こんな状況にムカついているのが、日本音楽著作権協会。音楽の著作物を利用しときながら、その使用料を支払わないとはけしからんっ!!!!「がっぺむかつく!!!!」そんな感じで江頭2:50状態なわけです。


そこで、日本音楽著作権協会は攻めてきました。「訴えてやるー!!!!」と、クラブキャッツアイを演奏権侵害を理由に、カラオケ演奏の差止めと、損害賠償を請求。

しかし、その法的主張をどう理屈付けるか。ここが日本音楽著作権協会の悩みの種でした。
本来なら、カセットテープでのカラオケ伴奏も演奏権侵害を構成するわけで、これを理由に著作権侵害を主張するべきです。
ところが、当時は例外的にこのようなカラオケ伴奏は著作権侵害とならないという特則があったのです。


だから裁判所も困った。
裁判所も、うさんくさいおっさんどもからお金を巻き上げていたかどうかは知らないが、とにかく無断で音楽の著作物を使って金儲けするのはよろしくない!そんな風に考えていた模様です。


さっきも言ったように、お客のカラオケ行為は著作権侵害とならない。
つまり、


お客のカラオケ行為=適法
 ↓
クラブキャッツアイはカラオケテープを再生しただけ(当時は適法な行為)
 ↓
お客のカラオケ行為という適法な行為をさせたに過ぎない
 ↓
クラブキャッツアイは適法なことをさせただけで違法となるのはおかしい。


そう考えるのが論理的だろう。
だから、法を素直に適用すると日本音楽著作権協会は負ける、はずなのだが、


でますた裏技。
最高裁はなんと日本音楽著作権協会を勝たせた。国権の1つである司法権を司る最高機関がクラブキャッツアイに負けの烙印を押したわけです。

どうやって、日本音楽著作権協会を勝たせたのか?
この論理がまさに法律の奥深さと難解さを表している。


まず、さっきのGet Wildの例から考えると、著作権侵害が成立するには、
演奏権侵害に該当し(積極的要件)、かつ、権利制限の例外に該当しないこと(消極的要件)
という2つの要件を充足する必要がある。


当時では、カラオケ伴奏のみでは演奏権侵害とならなかったわけです。
そこで、客のカラオケ行為をクラブキャッツアイの行為だと、なんとも不可思議な判断を最高裁はした。

つまり、カラオケしたのはお客ではなく、


演奏者=クラブキャッツアイ


もうね。あほかと。
ツッコんじゃう人もいるでしょう。

なんせ歌っているのは「お客」なわけで、クラブキャッツアイは歌っているわけではない。にもかかわらず、なぜクラブキャッツアイが権利侵害の主体となるのか?


この点に関して最高裁こう言う

 客のみが歌唱する場合でも、客は、クラブキャッツアイと無関係に歌唱しているわけではなく、クラブキャッツアイの従業員による歌唱の勧誘、クラブキャッツアイの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、クラブキャッツアイの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、クラブキャッツアイの管理のもとに歌唱している。

第1の理由は、
客のカラオケ行為が、クラブキャッツアイによって管理・支配されてなされたものということだからということ

 他方、クラブキャッツアイは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図って営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであって、客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からはクラブキャッツアイによる歌唱と同視しうるものであるからである

第2の理由は、
客のカラオケ行為が、クラブキャッツアイに利益が帰属することを意図してなされたものだからということ


つまり、
スナックが、①管理・支配して、②利益の帰属のために、お客にカラオケサービスしている場合、


法的な観点からの著作物の利用主体=クラブキャッツアイ


という構図を最高裁はでっち上げたということになります。



「営業上の利益を増大させることを意図していた」とされたクラブキャッツアイは、もちろん権利制限の著作権法38条1項は適用されることなく、めでたく日本音楽著作権協会著作権侵害に基づく請求が認められたということになりました。

【カラオケ法理】

要件
①管理支配性
②図利性
効果
支分権侵害主体

ということで、ここに「カラオケ法理」という裏技が完成することに相成りました。
が、
これは物語の序曲に過ぎなかったわけで。
物語は昭和63年3月15日に始まったわけですが、20年以上経った平成21年1月27日に、カラオケに始まったこの法理論をめぐり壮絶な戦いがテレビ局によってなされることになる。


が、意外に面倒臭いことに気付いた今日この頃です。



あぁ




息をするのも(ry



ということで、さようなら。