抵当権に基づく妨害排除請求(百Ⅰ88)

むっちゃ恐い夢見た。


司法試験の夢。


試験科目が、民事系から民法や民訴を別々に分けてやることになって、
「え?」
ってなって、わけわからんまま時間が過ぎて、問題は難しくないのに何も書けなかったという夢。


げんなりした。
と、同時に、いかなる事態にも対応できるように勉強頑張ろうという意欲も出てきた。

昨日、抵当権の判タの記事見てて気づいたけど、H17の抵当権に基づく妨害排除請求の事案(百Ⅰ88)って、規範しか知らなくて、事案とそのあてはめが解ってない。

抵当権に基づく妨害排除請求(百Ⅰ88)……最判平17.3.10民集59・2・356

■ 事実の概要
 X社は、A社の注文により、A社所有の土地上にホテル(本件建物)を建築した。A社は、請負代金の大部分を支払わなかったが、X社のために本件建物及びその敷地に抵当権を設定してその旨の登記を了し、X社との間で、本件建物を他に賃貸する場合にはX社の承諾を得ること等を合意した上で、X社から本件建物の引渡しを受けた。
 ところが、A社は、合意に違反し、X社の承諾を得ずに、B社に対し本件建物を賃貸して引き渡し、更にB社は、Y社に対しこれを転貸して引き渡した。その賃貸借契約及び転貸借契約は、いずれも期間を5年とする長期のもので、その賃料額は適正な額を大幅に下回り、敷金・保証金額が賃料額に比して著しく高額であり、契約当事者であるA社、B社及びY社の役員が一部共通するなどの事情からみて、X社の抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められるものであった。X社は、本件建物及びその敷地につき、抵当権の実行としての競売を申し立てたが売却に至らず、現在、その売却の見込みは立っていない。
 X社は、Y社による本件建物の占有により抵当権が侵害されたことを理由に、抵当権に基づく妨害排除請求として、本件建物を明け渡すこと及び抵当権侵害による不法行為に基づき賃料相当損害金を支払うことを請求し、原審(東京高判平13. 1. 30判タ1058号180頁)は、これらの請求をいずれも認容した。これに対し、Y社から上告及び上告受理申立てがされた。
■ 争点

  1. 有権原占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求が可否
  2. 抵当権者が抵当権に基づく妨害排除請求として直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることの可否
  3. 抵当権侵害を理由とする賃料相当損害金の賠償請求の可否

■ 判旨
 本判決は、原審が抵当権に基づく妨害排除請求を認容した部分はこれを維持して上告を棄却したが、原審が賃料相当損害金請求を認容した部分は破棄して請求を棄却した。
1 有権原占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求が可否
 本判決は、一般論として、平成11年判決を引用した上、抵当権設定後に所有者から権原の設定を受けて抵当不動産を占有する者について、「その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる」とした。その理由として、「抵当不動産の所有者は、抵当不動産を使用又は収益するに当たり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないから」とする。
 あてはめについては、「本件建物の所有者であるA社は、本件抵当権設定登記後、本件合意に基づく被担保債権の分割弁済を一切行わなかった上、本件合意に違反して、B社との間で期間を5年とする本件賃貸借契約を締結し、その約4か月後、B社はYとの間で同じく期間を5年とする本件転貸借契約を締結した。B社とY社は同一人が代表取締役を務めており、本件賃貸借契約の内容が変更された後においては、本件賃貸借契約と本件転貸借契約は、賃料額が同額(月額100万円)であり、敷金額(本件賃貸借契約)と保証金額(本件転貸借契約)も同額(1億円)である。そして、その賃料額は適正な賃料額を大きく下回り、その敷金額又は保証金額は、賃料額に比して著しく高額である。また、A社の代表取締役は、平成6年から平成8年にかけてY社の取締役の地位にあった者であるが、本件建物及びその敷地の競売手続による売却が進まない状況の下で、X社に対し、本件建物の敷地に設定されている本件抵当権を100万円の支払と引換えに放棄するように要求した。
 以上の諸点に照らすと、本件抵当権設定登記後に締結された本件賃貸借契約、本件転貸借契約のいずれについても、本件抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められるものというべきであり、しかも、Y社の占有により本件建物及びその敷地の交換価値の実現が妨げられ、X社の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるということができる。」として、抵当権の侵害を認めた。
 旧法下の本件事案において、抵当権の登記後に設定された賃貸借契約は、民法旧395条で保護される短期賃貸借に該当しなければ、抵当権者には対抗できず、賃貸借契約は買受人には引き受けられない。AB 間の賃貸借契約の期間は5 年で、短期賃貸借には当たらないため、低廉な賃料・高額の敷金などの賃貸借契約の内容を対抗されることによる買受人の不利益を理由として、抵当不動産の最低売却価額(現民事執行法では売却基準価額)が減額されることはないので、抵当権を侵害していないとも考えられる。しかし、買受後の紛争発生を懸念させる異常な占有があると、買受希望者が現れなかったり(交換価値の実現阻害)、買受希望者が減って適正な競争が成り立たず売却価額が低下する(優先弁済権行使の困難化)。このような異常な占有が、抵当権侵害を生じると評価されるのであり、民事執行法55条等の保全処分の要件である価格減少行為とも共通性をもつ。このことから客観的要件が認められる。
 また、合意に反する無断賃貸、4 カ月後の転貸、ABY の密接な関係、低額の賃料、高額の敷金・保証金、低額での抵当権放棄要求をあげて、本件賃貸借・転貸借が共に競売手続妨害目的で締結されたものと認定している。
2 抵当権者が抵当権に基づく妨害排除請求として直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることの可否
 「抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には」、これができるとした。結論として、A社・B社間の賃貸借及びB社・Y社間の転貸借はいずれも競売妨害の目的が認められ、これによりXの優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるといえ、また、A社が抵当不動産であるホテルを適切に維持管理することも期待できないから、X社は、Y社に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、直接自己への同ホテルの明渡しを求めることできると判示した。
3 抵当権侵害を理由とする賃料相当損害金の賠償請求の可否
 X社のY社に対する抵当権侵害を理由とする賃料相当損害金の賠償請求については、抵当権者は抵当不動産を自ら使用することはできず、民事執行法上の手続等によらず収益することもできないこと、「抵当権者が抵当権に基づく妨害排除請求により取得する占有は、抵当不動産の所有者に代わり抵当不動産を維持管理することを目的とするものであって」、使用収益することを目的とするものではないことを理由に、これを棄却した。これは、抵当権者は不動産執行手続によらずに抵当不動産に係る賃料相当損害金を請求することはできないとしたところ、抵当権が非占有担保であることを前提に、抵当権者が取得する占有はあくまで管理占有にすぎないことから導かれるものである。

やっぱり今年の問題も、抵当権が非占有担保権であることから、その損害の性質を検討しろって趣旨だったのかな。