前田雅英「刑法総論講義〔第5版〕」がすごすぎる件

刑法総論講義 第5版

刑法総論講義 第5版

この試験直前期に基本書を購入。
試験対策としては愚行以外のなにものでもない。
が、だーまえファンとしては、買わずにはいられなかった。試験とか抜きで。



3版から新版が出るごとに買ってるから、前田刑法総論が3冊。


ヴェテ臭がするよ!俺からすげえヴェテのかほりが!


もうすぐ31歳のおっさんになります。
そんなおっさんはドラゴンボール解が終了して悲しいです。


んなこたぁ、どーでもいい。


前田先生のこの刑法総論第5版だ。

前の版から
「自説より判例
って意識がより強くなってたと思ってたら、
今回の5版で、それがさらに推し進められている。ほとんど判例解説本の様相を呈してきた(もちろん前田説も維持されているけど)。
「あれ?4版のあの記述は……?」
って、思うくらい、自説の記述がなかったことにされている部分が多々ある。
にもかかわらず、このページ数の増量。
その原因は、判例の分析・考察の量がものすごく増えたため。



こりゃ使わない手はないじゃないか。


って思わすほどの、前田先生の「本気」を感じた。
山●先生のような学説検討の空中戦を主とする本とは異なり、判例に対する考察が本当にすごい。いや、それは前々からなわけだが、今回のこの判例分析のまとめは秀逸。
因みに山●先生は好きだけどな。


まぁ、「なんだよこのしょぼい分析」とか思う学者もいるだろうけど、前田先生のような基本書がこれからスタンダードになってほしいわ。もちろん学説的にじゃなくて、アプローチ的な意味で。


特に、刑法学者本で、とくに刑法総論とかは学説的な議論が多くて、それが無要とまでは言わないけれど、それだけに終始する自己満足の本が多いからなぁ。大学の軽音サークルで仲間内だけでやってる自己満足的な演奏を聴かされたあんな感じの……



それに比べると、行政法は本当に良書が多い。ものすごくバランスがいい良書が。


こういうのって、絶対その分野の先人研究者のせいだと思う。民法なら我妻。憲法なら芦部。民訴なら兼子等。



そんな中、刑法は悪書の数が多い分野だ。司法試験的に。逆説的に考えると、研究者的には最も崇高な分野なのかもしれない。
司法試験的には無駄な記載が大量なんだよなぁ。刑法の基本書って。逆に、必要な情報が薄っぺらかったり。例えば、具体的な事例におけるあてはめとか。
色々理由があるんだろうけど、行政法の分野と比較すると、そのバランスはすげー悪い。


しかも、刑法の学者って、実はすげーレベル高いのに、自説主張を優先するためか、基本書の情報と司法試験受験生の欲しい情報とのギャップが激しいだよなぁ。需要と供給の差が激しいというか。空気読めよ刑法学者は。
こういうこと言うと、
「体系書は自説書いてナンボ」
とか叫ぶ残念さんもいるけど、「体系書」と「教科書」の違いを知らないんだろうなと、残念に思いました。
試験的にも、また実務的にも、わかりやすいってことは重要で、裁判員制度が始まってその重要度はさらにアップしている。
「シケタイでも読んどけ」
とか言う奴もいるけれど、まぁ試験対策で使う本なんて好きなやつ使えばいいんじゃね?と思う。
上位答案に前田を使っているのが多いってのは、多分前田好きな人は刑法好きな人が多いってことなのかなと思う。学問的にはまると山口刑法に移行する傾向にあるけど。


ただ、前田ファンの俺が山口刑法を読みまくったというのは、なんつーか、変な背徳感を感ずる。いや、本命はおまえなんだって!


とりあえず、今回のこの前田先生の基本書で、この傾向が少しでも変わればなと。


あぁ、5版の内容に入るまでにアホみたいな愚痴をしてしまった。
とりあえず、実行行為の開始と終了とか、因果関係とか、正当防衛行為の一個性の問題とか、共謀共同正犯とか、そこでの判例の考察は見所が満載なんだわ。


ツッコミどころも満載かもしれないが、まだそこまでじっくり読めてないんで、今日はこの辺で。