ニッポン放送の画策!?の巻(中編)


前回のあらずじ

ニッポン放送は、仲良しさんのフジテレビさんの子会社になる予定でした。そのため、フジテレビさんはニッポン放送の株式について公開買い付け(TOB)行って株をいっぱい買っていました。


ところが、ライブドアという奴が突然現れ、時間外取引なる技を使い大量のニッポン放送の株式を買い、とうとう議決権の過半数を取得するに至りました。フジテレビさんの子会社になれなくなったニッポン放送はカンカンです。


そこで、仲良しさんのフジテレビさんに自社株を購入して欲しかったニッポン放送は考えました。ニッポン放送の発行済株式総数は3280万株であるところ、フジテレビに対して4720万株(発行済株式総数の1.44倍)の新株予約権を発行しよう。うん。これナイスアイデア。こんな感じでニッポン放送の取締役会は新株予約権の発行を決定しましたとさ。


「この新株予約権をフジテレビさんが行使してくれたら、めでたくフジテレビさんの子会社だー!!」
ヽ( ´¬`)ノ ワ〜イ !!
と、ニッポン放送もしてやったりといったところです。
ライブドアはどうするのでしょう?

以上が、前回のお話。
このままでは、ホリエモンの人生を賭けた買収作戦が失敗に終わってしまいかねない。
そこで、とうとうライブドアは裁判所に助けを求めることにしました。


(ノ◇≦。) 「裁判所さん!!ニッポン放送新株予約権の発行を差し止めてー!!!!」


実は、会社法247条2号によって新株予約権の発行を食い止めることができるのである。
会社法247条2項はこう規定している。
すなわち、

新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、新株予約権の発行をやめることを請求することができる。

としているのである。


つまり、ニッポン放送の株式を大量に取得した大株主であるライブドアは、著しく不公正な方法により新株予約権が発行されて不利益を受けるおそれがあるので、その発行をやめろと裁判所にお願いできるのである。


ここで難しい問題が生じる。
それは、ニッポン放送の発行する新株予約権が著しく不公正な方法によるものといえるのか??という問題である。


従来、この問題は新株予約権ではなく、新株の発行の場合にその発行が著しく不公正な方法によるものといえるのか??という内容で論じられていた。
なぜなら、買収者が現れた際に株式を大量に買い占められ支配されることを防止するには、買収者以外の者に買収者以上の株式を保有してもらうことが必要となるからである。しかも、新株を発行することによって、株式の数が増える。そのため、いくら株を買ってもお金が必要となってしまう。いつかは断念せざるを得ないのである。


以上のような買収防止の効果が新株予約権でも同様にある。だって、新株予約権を行使したらその権利の分の株式を取得できるからである。この新株予約権という権利をいっぱいあればその分、行使すればいっぱい株式が取得できてしまうのである*1


従来、新株発行の差し止めが認められるか否かは、その発行目的によって決せられてきた。それは

  1. 「支配権の維持・確保目的」の発行
  2. 「資金調達目的」の発行

以上の二つに目的を分けて、差し止めが可能かどうかを決する。これを「主要目的ルール」という。
「資金調達目的」の新株発行の場合、差し止めることはできない。
資金調達のための新株発行とは、株を発行してそれを買ってもらいお金を集めるということである。会社を経営していく上で、資金は必要不可欠である。そのため、公開会社では、かなり自由に新株発行を行う裁量が取締役会に認められている*2


一方、経営陣(取締役等)が現在の経営支配権を維持・確保する目的で、自分たちに有利な働きかけをするような人に株式を大量に保有してもらって、自分たちの地位を守ろうというような場合の新株発行は差し止めの対象となる。
つまり、経営者を決定する機関が株主総会であるところ、自分たちに有利になるような人に大量の株式を取得させ、その人に株主総会で有利な働きかけをしてもらう。そのためだけに、新株を発行するような場合である。こんなデキレースを画策することは許されないのである。本来、会社の所有者は株主であって、会社の経営者を誰にするのかは会社の所有者たちである株主が決めることになっているのである。それゆえ、経営者を選択する自由を株主から奪うような決定を、選ばれるべき経営陣が決めることはできないのである。


以上のように、発行目的がどちらかということが重要となってくる。
果たして、従来の新株発行の議論が新株予約権の場合、どうなるのか?
いやいや。そもそも、ニッポン放送新株予約権の発行は資金調達目的じゃねーんじゃねーか??
とか色々ありますが、裁判所の判断は如何に!?
それは次回なの!!

*1:もっとも、その対価を支払う必要がある。この対価が著しく低廉な場合や無料の場合なんかは「著しく不公正な方法による」発行ということとなり差し止められる可能性がある。

*2:非公開会社では、原則として株主総会の特別決議が必要。