ニッポン放送の画策!?の巻(後編)

授業始めますよ。うっちのために頑張ってみようということで、後編!あぁ。でも、難しいね!

前回のあらずじ

ニッポン放送は、突然現れたライブドアという輩を排除するため、仲良しさんのフジテレビさんに対して4720万株(発行済株式総数の1.44倍)の新株予約権を発行しました。


「この新株予約権をフジテレビさんが行使してくれたら、めでたくフジテレビさんの子会社だー!!」
ヽ( ´¬`)ノ ワ〜イ !!
と、ニッポン放送もしてやったりといったところです。


そこでライブドア
(ノ◇≦。) 「裁判所さん!!ニッポン放送新株予約権の発行を差し止めてー!!!!」
と、訴えました。
果たして裁判所は差止めてくれるのでしょうか?

以上が、前回のお話。

今までは、敵対的買収の対処として新株発行がなされてきた。この場合、発行の目的が、①支配権の維持・確保目的の発行か、②資金調達目的の発行かによって、裁判所は発行を差止めるべきかどうか判断していた。


今回の事件でも、裁判所は基本的に発行の主要目的が何なのか!?という視点から差止の有無を決定したのであった。
すこし難しいが、裁判所の決定内容についてみてみると

「会社の経営支配権に現に争いが生じている場面において、取締役会が、支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ、現経営者又はこれを支持して事実上の影響力を及ぼしている特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的として新株等を発行することまで、経営判断事項として無制限に認めているものではないと解すべきである。」

として、従来の主要目的ルールを採用。支配権の維持・確保目的の発行は差止めの対象となるという判断をした。
果たして、そもそも支配権の維持・確保目的の発行だったのか?


裁判所は、ニッポン放送新株予約権の発行が支配権の維持・確保目的の発行と判断した。

というのも、実はニッポン放送自身が、「第三者割当による新株予約券発行のお知らせ」なる公表書面の中で、ライブドアニッポン放送の支配株主になることは望ましくないと判断して行った行為であることを自認していた。そのため、本件新株予約権発行の目的が支配維持・確保にあるという認定は避けることはできない運命なのであった*1


やばい。ニッポン放送。このままでは差止められてしまう。
ところが、裁判所の判断には続きがありました。

「経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権発行が許されないのは、取締役は会社の所有者たる株主の信認に基礎を置くものであるから、株主全体の利益の保護という観点から新株予約権の発行を正当化する特段の事情がある場合には、例外的に、経営支配権の維持・確保を主要な目的とする発行も不公正発行に該当しない。」

という判断をした!

要するに、従来の判断基準である「主要目的ルール」を採用しつつ、本来、発行が認められない支配権の維持・確保目的の発行が、例外的に正当化される場合がある!!と判断したのだ。すなわち、原則としてニッポン放送の経営支配権の維持・確保目的のための新株予約権の発行であって差止められる。ただ、ライブドアが支配することがよろしくないという事情を発行する方が立証したら、新株予約権を発行して良いよ。と、裁判所はいうのである。


では、例外的に発行できる事情があったのか?


実は、結局のところ、ニッポン放送新株予約権の発行は差止められたのであった。つまり、支配権の維持・確保目的の発行が許容されるような特段の事情が認められなかったのである。

では、支配権の維持・確保目的の発行が許容されるような事情ってどのような事情なのか?

裁判所はとんでもなく難しい基準を編み出してしまったのである。



例えば、株式の敵対的買収者が

  1. 真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(いわゆるグリーンメイラーである場合)
  2. 会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権、ノウハウ、企業秘密情報、主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合
  3. 会社経営を支配した後に、当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合
  4. 会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合

以上のいずれかに該当して、会社を食い物にしようとしている場合で、かつ、対抗手段として必要性・相当性が認めらる場合に限り支配権の維持・確保目的の新株予約権の発行が認められるという。
なぜなら、そのような場合、濫用目的をもって株式を取得した当該敵対的買収者は株主として保護するに値しないし、当該敵対的買収者を放置すれば他の株主の利益が損なわれることが明らかであるため、敵対的買収者から株主を保護する必要性が高いためである。


結局、ライブドアが敵対的存在であるという一事のみをもって、これに対抗する手段として新株予約権を発行することは、上記の必要性や相当性を充足するものと認められない。として、裁判所は新株予約権の発行が不公正発行として差止めたのであった。


いやぁ。なんか難しいね〜。混乱してきたぜ!

*1:なお、本件諸決定の全てが指摘しているように、支配権維持・確保目的というためには、現経営陣に自己または第三者の個人的利益を得る目的があることは要求されない。すなわち、敵対的買収を阻止することが会社のためであると信じて行動したとしても、そのことは支配権維持・確保目的と認定される妨げにはならない 。