ダウンロード違法化が始まったがWinnyやshareによる適法ダウンロードが始まる日も近い。の巻

※ダウンロード違法化に関する問題について、【補足】を追記しました。(1月7日)

あけましておめでとうございます。


ということで、2010年でございます。
2010年といえば、やはり今から始まる

   
    ダウンロード違法化



これが大問題ってことはみんな知っているのでしょうか?
著作権法改正によって、著作権侵害行為によって作られた著作物(違法ファイル)のうち動画と音楽のみを対象に、そのダウンロードが違法となることになった。
もちろん、違法ファイルであることの認識がなければ、ダウンロード行為が違法となることはないので、たまたまダウンロードしたファイルが違法ファイルだったとしても違法行為として損害賠償義務を負うことはない。


にしてもだ、なんつーザル法なんだ。
著作権法の勉強をしている人はきっとそう思うんじゃないか?

■民事と刑事の責任は別もの

当然ながらこの問題を論じるにあたっては、違法行為の責任が「民事」か「刑事」かという点で全く異なるということを理解しなければならない。
民事上損害賠償責任を負うからと言って、犯罪者となるわけではない。罰則、つまり犯罪としてのの規定がない以上、「犯罪」となることはない。これが罪刑法定主義という大原則であって、これは「犯罪なければ刑罰なし」とも言われる。
たまに、「違法行為する人間=犯罪者」ということを言う人がいるが、
法律的には完全に間違いである。
法改正によって、違法ファイルのダウンロードが「違法」となったわけだが、罰則はないので、ダウンロードが犯罪となるわけではない
したがって、


  違法ファイルをいくらダウンロードしまくってもそれを理由に
警察に逮捕されたり捜索押収されることはない


ということで、違法といっても民事上の損害賠償責任を負う「可能性」が出てくるのみ。
だが、この「可能性」もものすごく限定されるということが、以下でわかる。


ダウンロード違法化の条文は著作権法30条にある
原則として、私的複製は適法なのだが、例外として

 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

には、著作権侵害=違法となる。これが改正法の規定(著作権法30条1項3号)。
この30条1項3号が違法行為を「録音又は録画」と限定したため、音楽と動画をダウンロードする行為のみが違法となる「可能性」がある。というのも、ただ違法にアップロードされた音楽や動画であっても、違法なものだという事実を「知りながら」でなければ違法ではないからだ(条文上、「知りながら行なう場合」のみが著作権侵害行為になる)。

■【補足】ストリーミング形式のネットラジオの保存(ダウンロード)は違法か?

ブログをいろいろ見ていると、
  「ネットラジオ(Webラジオ)のダウンロード保存も違法なのかー!!??ガクブル」
といった記事があった。このようなダウンロードの萎縮効果は非常に問題がある。適法・違法の境界が十分に説明されていないのが原因だ。
結論からいうと、


   権利者から配信されたものならば、ダウンロード適法!


ということになる。
30条1項3号が、ダウンロードが違法となる場合を「著作権を侵害する」自動公衆送信を受信して行う場合に限定している。つまり、ここで違法なダウンロードと想定されているケースは、無権利者によって配信されたファイルのダウンロードだけということになる(権利者の許諾がなければ、そのような配信行為は公衆送信権侵害ゆえ「著作権を侵害する自動公衆送信」となる)。
したがって、無権利者ではなく、権利者によって適法に配信されたものならば、「著作権を侵害する」自動公衆送信を受信して行う場合に当たらないので、これをダウンロードしても違法ではない。ということなので、自己満足的に、かつ、がむしゃらに、けいおん!のWebラジオを自分のPC上に保存しても、それは個人の自由なのである。自由万歳。
逆に、著作権者に無許諾で配信されているようなもの(無権利者による配信)をダウンロードする場合、「著作権を侵害する」自動公衆送信を受信して行う場合に当たるので、違法となるおそれがある。
もっとも、違法とされる場合は、違法配信であるという「事実を知りながら」ダウンロードする場合に限定される。そのため、違法配信だとしても不注意によるダウンロードならば違法とされない。
また、たとえ違法配信の事実を知っていても、違法とされるのは「デジタル方式の録音又は録画」であるから、アナログ形式で保存する場合は、違法とされない。というか、そんなことを知る術もない。
このように、違法配信であっても違法とされない手段はあるので、過剰に心配する必要はない。

ついでに言うと、権利者が違法ダウンロードを理由に損害賠償をする場合、その主張立証責任は権利者が負担することになる。つまり、訴える方(権利者)が、侵害者が違法ファイルと「事実を知りながら」ダウンロードしたという主張立証をする必要がある。もっとも、侵害者の主観的事情を立証することは自白がないとかなり難しい。だから、「立証責任あるところに敗訴あり」なんてことが言われることもある。
特に、インターネットを利用する上で、いちいち「これは適法だね」とか意識する人なんかほとんどいないわけで、それを考えるとかなり悪質なケース以外は請求できないと思われる。
結局、完全に違法ダウンロードをやったとして訴えられたからといって、直ちに賠償義務が発生するというわけでもない、というのが民事訴訟法上の現実だったりもする。


しかも、違法となるのは「自動公衆送信」の受信というダウンロードのみである。ネットでダウンロードする場合が典型だが、しかし、例えば、メールやメッセンジャーなどを使った場合のような「1対1」でのファイルの送受信のように、「公衆」に向けたものではない場合なんかは、30条1項3号によって違法とはされない。
また、ダウンロードが「自動」的に行えるような場合のみが違法となるので、ダウンロードに一定の条件を付けることによって「自動」的に行えないようにすれば、本条によって違法とはならないのだろう。例えば、パスワードによる条件が考えられるが、裁判例に照らすと、簡単に誰もが一定の手続をとればパスワードを容易に知ることができるといったような場合(ex.会員登録)には、まだ「自動」性を否定できないだろう。

■【補足】違法ファイルの認識がなくても損害賠償義務は負うのか?

「民事的に、不法行為著作権侵害)に基づく損害賠償請求をする分には、Winny利用者に故意がなくったって大丈夫なのですから(過失なしとはいえないでしょう。)」
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2009/08/index.html
民法709条が定めた不法行為責任は、認識がなく、不注意でも損害賠償義務を負うとする。したがって、違法ファイルを不注意で「アップロード」すれば、自動公衆送信権の侵害(著作権侵害)ということで、損害賠償義務を負う可能性がある。


このようなことを言われると、
「違法ファイルと知らずにダウンロードしても損害賠償義務を負うのかー!!??」
って勘違いする人がいるかもしれない。しかし、不注意で違法ファイルを「ダウンロード」しても、「絶対に」それだけでは、著作権法30条1項3号の著作権侵害として損害賠償義務を負うことはない。なぜなら、同条で著作権侵害となる要件として、著作権を侵害する自動公衆送信を受信した録音又は録画であるという「事実を知りながら行う場合」としているからだ。つまり、違法サイトであることや海賊版のやりとりが行われるファイル交換ソフトであることなどを認識した上で、海賊版の音楽や動画ファイルをダウンロードすることが、違法となる条件ということになる。
したがって、違法ファイルの認識がない場合、そのダウンロードは違法ではなく、著作権侵害とはならない。よって、損害賠償義務を負うことはない。
そして、仮に認識があったとしても、その立証責任は著作権者側が負担するため、権利主張する立証に失敗すれば、損害賠償義務を負うことはない。


そういうことで、ダウンロードが例外的に違法とされる場合が規定されたわけだが、
しかし、さらにこの例外として適法となる場合があって、

■47条の8(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)

 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

要するに、単に動画配信サイトで配信される動画を見た際にキャッシュがPCに生成されるにすぎないような場合には、違法とはならないという規定を追加しているわけだ。
しかし、本条のかっこ書きにおいて適法となる場合を
「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」
と限定している。そのため、


   「権利者に無許諾でアップロードされた違法動画をYouTubeで見たら違法!!??」


と、思う人がいるかもしれない。
が、文化庁によると

 動画投稿サイト等から動画を視聴する際に、視聴するデータがコンピュータ内部に一時的に保存されることがありますが、このような情報の蓄積(キャッシュ)に関しては、今回の改正に盛り込まれている電子計算機における著作物利用に伴う複製に関する著作権の例外規定(第47条の8)が適用され、権利侵害にならないと考えられます。違法投稿された動画を視聴する際にコンピュータ内部に作成されるキャッシュについても同様です。
 ただし、こういったキャッシュをキャッシュフォルダ(記憶装置上でキャッシュが作成・格納される領域)から取り出して別のソフトウェアにより視聴したり、別の記録媒体に保存したりするような場合については、この例外規定は適用されず、著作権が及ぶものと考えられます。(第49条)
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html

とされる。
したがって、この47条の8に照らすと


   YouTubeでの違法な動画を再生しても適法


となる。
従前から一時キャッシュの利用は「私的利用の範囲」ということで著作権法30条によって適法とされていた。
これを違法な著作権侵害と言い出すと「パソコンの使用=著作権侵害」となってしまい、この結論が妥当性を欠くことは明らかだろう。
そこで、文科省や法制局も、現実社会を考えて一時キャッシュは適法にしないとなぁ、って考えたんだろう。

■【補足】Winnyやshareのキャッシュは適法か?

Winnyやshareにおけるキャッシュは、上記の意味のようなキャッシュとは異なり適法とはならない。言葉が同じでもその内実は全く異なるので、適法要件に該当しない。
47条の8で適法と想定しているキャッシュは、動画や音楽の再生に必要な部分のみである。これは本条が、適法となる範囲を「当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度」としているためである。つまり、動画・音楽の再生に利用するために必要な部分のみダウンロードが適法となるわけで、再生とは無関係で単に秘匿性保持のためだけに利用されているWinnyやshareのキャッシュがこの規定に該当しないことは明らかである。
したがって、Winnyやshareにおけるキャッシュはここで適法とされる範囲に含まれない。むしろ、このキャッシュは機能的に見て違法ファイルの代替物と同視されると考えられるので、このキャッシュ自体が違法ファイルとされる。これまで数少ないWinnyやshareにおいて著作権侵害で起訴された事例はこのような考え方を前提としている。
これは動画や音楽ファイルをZIP形式等にしても、その違法性が変わらないのと同じだ。


名前が「キャッシュ」でも要件に該当するかどうかが適法となるかの分かれ目だということを忘れてはならない。


しかし、47条の8で適法とされた一時キャッシュも例外的に違法となる。
つまり、さらに例外規定があって、その規定に定めた者に当たると、著作権侵害をしたものとみなされる(よって、この規定は、例外の例外のそのまた例外ってことになる)。

■49条1項7号

 第47条の8の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を、当該著作物の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該著作物に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあつては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該著作物を利用した者

つまり、YouTube見た人がキャッシュファイルをPC上にコピー、保存して使用する場合には、著作権侵害となるということだ。



この時点で気付いた人もいるかもしれないが、ものすごいザル法である。



そもそも、Winnyやshare等の対策のために作られたのがこの一連の規定だ。
たしかに、現行のWinnyやshareをそのまま使うと音楽や動画のダウンロードは違法となる可能性が大きい。


しかし、Winnyやshareの仕様を動画と音楽のみ、「ダウンロード方式」ではなくYouTubeのような「再生方式」に変更すれば、事実上、違法ダウンロードが把握できなくなってしまうではございませんか!!!!

つまりこういうことだ。

先ほど紹介したように、文化庁の見解によればYouTubeを「再生」することで違法となることはない
               ↓
YouTubeにアップロードされた違法動画を「再生」するだけなら「適法」ということ
               ↓
著作権者はプロバイダーに個人情報の開示請求ができない(逆に、このような適法行為を行っている場合に、プロバイダーが著作権者に個人情報を開示すれば、プロバイダーは逆にプライバシー侵害で不法行為を構成するおそれすらある)
               ↓
その結果、著作権者はYouTubeを再生した者を把握することができない
               ↓
ということは、たとえYouTubeの一時キャッシュをコピーする行為を違法といったところで、著作権者にそれを把握する手段が現在はない
               ↓
事実上、YouTubeの違法ファイルのダウンロードが可能となってしまう


では、このようなYouTube手法をP2Pツール(新P2Pツール)に採用すると、どうなるか?

P2Pツールは、動画と音楽に関しては「再生」しかできない=適法
               ↓しかし
一時キャッシュの把握は簡単なので、それをコピーして保存
               ↓
この行為は著作権法49条1項7号に該当するので違法なはず・・・
               ↓だが
著作権者は、これを把握することはできない
               ↓
事実上、違法ダウンロードをしてもおとがめなし!!!!!

     盛り上がって参りました。




どうよ、このザルっぷり。
たったこれだけで、ザル法となってしまうって、まったく中途半端な法規制だ。
これじゃ、権利者にとっても、利用者にとっても、何のメリットもないじゃないか。



こんな簡単なことで脱法可能となってしまうため、近いうちに技術者も著作権法の知識を得たら、こういうツールを作ってしまうだろう。技術者をなめてたらいけない。彼らの技術力は想像以上にすごかったりする。実際、動画に関してもH.264の技術を利用すれば高画質のままストリーミングで配信できるので不可能なことじゃないだろう。
そして、このツール自体は適法行為しかできないので、Winny事件の高裁判例に照らして考えると(ただ上告審でひっくり返る可能性は高い)、開発者が訴えられることはない。
もちろん、違法ダウンロードを容易にするために作ったことが明らかな場合は、著作権侵害の幇助として責任を負う可能性はあるが、Winny事件の金子氏のように「一時キャッシュのコピーはしないで下さい」と警鐘をならして、防止措置を講ずることで幇助とされることもない。花火に「人に向けないでください」って説明文を付けるようなもんだ。

Winny事件に関する記事

http://d.hatena.ne.jp/nihyan/20091008/p1
http://d.hatena.ne.jp/nihyan/20091128/p1


そもそもこんなザルなことになった要因は、「違法化」という手段によって著作権者を保護しようとしたからだ。
ちょっと考えてみてほしい。


   コピーするのって本当に悪い行為なのか?


著作権者の保護ということを、法は利用行為の制限という形でその目的を達成しようとしている。
しかし、えらーい学者さんたちも言うように、こんな手法に頼るのは限界があることはちょっと考えてみれば容易に解っちゃうことだったりする。
例えば、映画以外の著作物は原則、著作者の死後50年まで保護されるが、そんなに保護しても無意味な著作物が大量にあるわけで、このIT時代にそういう保護の仕方にはもう限界が出てきてるのはみえみえ。
著作権法のえら〜い学者代表の田村善之先生はこういった複製(コピー)を禁止する権利を中心とした著作権法について次のように言う。

 誰がどこでも複製できるようになった。それは確かに複製禁止権としての著作権の脅威ではあると思いますが、それは悪い自体なのか。むしろ、技術の進展によりもたらされた社会的な便益ではないか。複製ができるようになった、われわれの可能性が広がったということです。もっと肯定的に評価したほうがいいのではないかと私は思っています。
 旧態然とした法制度、要するに複製の数が少なかった時代の法制度が足かせとなって、こういったみんな複製できる、事実としてできるのにそういう複製を禁止する権利というのがあるせいで、みんなが技術の勉強の享受に失敗することがあってはならないと思うのです。昔の法律は複製禁止権があっても困らなかった時代の法律です。著作権法というのは。複製というのは数が少なかった。私人の自由を過度に害するものではなかったのですが、今は過度に害するものになっている。だとするとやはり私的複製、企業内複製をもっと自由にすべきだ。複製機器媒体から対価を徴収させるようにするべきですし、プロテクションの保護も私は強すぎると思います。
 さらに、著作権のほうも現在の市場を考えると、例えばDVDなどもすぐに売り切れてしまうのです。なので、例えば売り切れているということは、2度と販売するつもりがないならば、もう著作権者側はソフトでもうけようと思っていないわけですから、コピーを止める利益はないはずですので、そういったものについては保護しなくてもいいのではないかと私は思っています。むしろ、販売部数も少なく、今売っていないからこそプロテクションを解除したいわけです。そうすると侵害になるということになっているというのは、僕はみんなが複製をできる時代でちょっと時代錯誤的な法律なのではないかなと思っています。なかなかこういった消費者の声というのは、立法過程に反映されないのが残念なところであります。

著作権者の金銭的保護を考えるのなら、むしろダウンロードを適法と位置付けつつ、著作権者に対価が還流するような制度設計をすることの方が現実的には望ましい。
補償金制度がこれに近いが、もっと適切な対価還流型の制度にして、利用者と権利者のバランスを図るべきだ。
そもそも、著作権法1条で定めているように、著作権法は、

著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

つまり、著作権者の権利保護は、文化の発展に寄与するための手段に過ぎない。
文化の発展に既存の著作物の利用が不可欠なことは自明だろう。例えば、テレビドラマやアニメ等をひとつとっても、あれは原作のがほとんどで、その原作の利用によって幅広く人の目に触れ、それに触れた人がまた新たに著作物を創作したりしていって、そういった連鎖でいろんな著作者が新たに誕生していってるんじゃないか?
著作物の自由利用を拡大すれば、もっと多くの人に多くの著作物に触れる機会ができて、法の目的とする「文化の発展」に資するはずだ。
にもかかわらず、そういった自由利用を認めることによる文化が発展するのだという側面を、法は無視しすぎている。
本来あるべき著作物利用の自由が制約され過ぎてしまい、これでは「文化的所産の公正な利用に留意」しているとは到底言えないバランスの悪さじゃないか。
権利者保護は著作物創作へのインセンティブを与える手段に過ぎない。過剰な保護は、利用者の本来あるべき自由を制約してしまい、著作権法の目的である文化の発展を阻害することになりかねない。

私見

個人的には、今回の法改正は全くアホだなぁ、って思う。
著作権者を保護する手段が必要だと考えるところまでは正しい。しかし、こんなザルな改正法では著作権者も救われないし、同時に、ダウンロード違法化によって利用者の自由も制約され、権利者と利用者いずれにおいてもメリットなしではないか。
下手したら、ダウンロード違法化によってこれまで活性化しつつあった分野が一気に冷める可能性もある。みんなも経験があるかもしれないが、
「金だすほどじゃないけど、ただなら聴いてみようかな、見てみようかな」
っていうちょっとしたきっかけから、ハマることがある。そういう機会がこの法改正によってかなり減ってしまう可能性がある。これじゃ文化の発展とは逆行してしまう。
より問題と考えられる点は、ダウンロードツールの使用方法を解説したWebページなどが著作権侵害の幇助となる可能性があるという点だ。つまり、違法ダウンロードのやり方を教えて、違法ダウンロードの手助けをしたという評価がなされ、その結果、著作権侵害の幇助として違法行為とされるということである。


これはもはや憲法21条が保障するところの表現の自由を著しく制約するものじゃないか?


罰則を定めないことで、私人間の問題にとどめようとする法規制がなかなかこずるい(これによって訴訟において憲法問題として争う方法がかなり限定される)。ただ、「ダウンロードを違法」という立法者の判断が憲法違反だと言いたいところである。
ダウンロードが違法とされることによって、違法ダウンロード目的ではない場合にまで、このような解説ページが違法評価されるとすれば、萎縮して解説ページは減少して、その結果、有益な情報までも遮断することになりかねない。同時に、本来ならば有益な情報であるはずの情報を知る権利も制約される。
このように、これまで自由ゆえ有益だったインターネットが必要以上にその有益性が減少するばかりでなく、表現者は違法評価による不利益を被る可能性すらある。
もちろん憲法名誉毀損などの表現活動の自由までを保障するものではないが、憲法問題は別にしても、有益な情報を共有できる点がネットの強みだったはずで、これを間接的にせよ制約する結果を招来することは著作物の流通も阻害する結果となり、「文化の発展」という著作権法の目的にも反するではございませんかッ!!
そもそも「何が有益な情報なのか?」というのも問題ではあるが、少なくともそれを国家が判断すべきことではなく、個人の判断に委ねられるべき性質のものであろう。
このまま進むと平気で検閲なんかしちゃいかねない→いずれあの独裁国家と同じに…といった過剰な心配をしてしまう今日この頃なのはわたくしだけではないはず。



こんなに問題だらけなのに、法改正によるダウンロード違法化という手段は、ただ圧力団体の言いなりになっただけとしか思えない内容だ。


まぁ、これも「ダウンロード違法化」を主張する団体に飲み込まれた政治家の力のなさが最も問題なのかもしれない。が、それも国民が選んだわけだから、結局これは俺らの責任なのかもな〜・・・


【蛇足】
ネットランナーという雑誌が廃刊になったのは、たぶん、違法ダウンロードの幇助として権利者から賠償請求されるのをおそれたためなんだろうなぁ。