補助参加再考。の巻

模試の復習してて気づいたが、俺、補助参加についてちゃんと理解してなかった。
この辺は、結構、勉強したはずなのに…


考査委員の克己さんの法学教室の連載を参考に平成14年判決と昭和45年判決の判例を復習。

平成14年判決(最三小判平成14年1月22日判時1776号67頁)

■事実の概要
 Yは、カラオケボックス(本件店舗)の建築をAに請け負わせた。そして、Xは、本件店舗の備品として家具等の商品(本件商品)を売った。
 Xは、Aを被告として、Aに本件商品を販売したと主張して、その残代金の支払を求める訴え(前訴)を提起した。前訴において、Aは、Xが本件店舗に売った本件商品について、施主であるYが買い受けたものであると主張したことから、XはYに対して訴訟告知をした。 しかし、Yは前訴に補助参加しなかった。そして、本件商品に係る代金請求について、Xの請求を棄却する旨の判決が言い渡され確定した。前訴判決理由中において、本件商品はYが買い受けたことが認められる旨の判示がされていた。
 その後、Xは、Yを被告として、本件商品の売買代金の支払を求める訴え(後訴)を提起した。これが本件である。
 原判決は、53条4項、46条所定の訴訟告知による判決の効力が被告知者であるYに及ぶことになり、Yは、本訴において、Xに対し、前訴の判決の理由中の判断と異なり、本件商品を買い受けていないと主張することは許されないとして、Xの請求を認容した。これに対して、Yが上告受理の申立てをした。
 最高裁は、上告を受理した上で、次のように述べて、原判決を破棄して、事件を原審に差し戻した。


■判旨

 民訴法53条4項、46条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは、訴訟告知を受けた者が同法42条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ、ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成13年1月30日第一小法廷決定・民集55巻1号30頁参照)。
 また、民訴法46条所定の効力は、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(最高裁昭和45年10月22日第一小法廷判決・民集24巻11号1583頁参照)、この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし、ここでいう判決の理由とは、判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい、これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして、その他、民訴法46条所定の効力が、判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。
 これを本件についてみるに、前訴におけるXのAに対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって、YのXに対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく、前訴の判決はYの法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから、Yは、前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって、Yが前訴の訴訟告知を受けたからといってYに前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも、前訴の判決理由中、Aが本件商品を買い受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが、Yが本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は、前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから、同記載をもって、本訴において、Yは、Xに対し、本件商品の買主がYではないと主張することが許されないと解すべき理由もない。

昭和45年判決(最判昭45・10・22民集24巻11号1583頁)

■事実の概要
 AがYを被告として、建物所有権に基づき、Yが占有している本件建物の一部(本件貸室)の明渡しと損害賠償(賃料相当損害金の支払)を求めた前訴において、XがY側に補助参加した。Xは、本件貸室はXがYに賃貸しているものであるところ、その本件貸室を含む本件建物はXY聞の賃貸借契約締結当時からXの所有に属する旨を主張した。しかし、前訴はA勝訴の判決の確定により終了し、その判決の理由中では、本件建物は、XY聞の賃貸借契約締結当時からXではなくAの所有に属していた旨の判断が示されていた。
 その後、Xが、Yに対して、当該賃貸借契約に基づいて賃料等の支払を求める訴えを提起した。この後訴において、Yは、Xが建物所有者であると誤認して賃貸借契約を締結したのであるから、賃貸借契約は錯誤により無効であると主張した。更に、Yは、賃貸借契約締結時にYはXに対して300万円の建設協力保証金を支払ったところ、建設協力金保証契約も、賃貸借契約と不可分一体であるから、錯誤により無効であるとして、300万円の返還を求める反訴を提起した。
 第1審判決は、既判力説の立場から、46条により、Xは、Yとの関係で、賃貸借契約締結当時から本件建物がXの所有に属する旨を主張することができなくなるわけではないとしつつも、独自の審理の結果、賃貸借契約締結当時から本件建物がXの所有に属しておらず、その結果、両契約は錯誤によって無効であるとして、本訴請求を棄却し反訴請求を認容した。Xが控訴したところ、控訴審判決=原判決は、XとYの聞には参加的効力が働き、XはYに対して賃貸借契約締結当時から本件建物がXの所有に属する旨を主張することはできないことを前提に、両契約の錯誤無効を肯定して、控訴を棄却した。そこで、Xが上告したが、最高裁は、次のように述べて、Xの上告を棄却。


■判旨

 民訴法46条の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなくそれとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であって、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなくその前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。
 けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人がその訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至ったときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法46条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法53条4項が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法46条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。
 右別件訴訟〔前訴〕の確定判決の効力は、その訴訟の被参加人たるYと補助参加人たるXとの聞においては、その判決の理由中でなされた判断である本件建物の所有権が右賃貸当時Xには属していなかったとの判断にも及ぶものというべきであり、したがって、Xは、右判決の効力により、本訴においても、Yに対し、本件建物の所有権が右賃貸当時Xに属していたと主張することは許されない。


■補助参加の利益
 訴訟告知による参加的効力は参加利益(補助参加の利益)ある者にのみ生ずると解されるが、その補助参加の利益は、訴訟の結果について「利害関係」を有する場合に認められる(民訴法42条)。この「利害関係」は、事実上の利害関係では足りず、法律上の利害関係であることを要するとする点では、判例・学説上ほぼ一致しており、取締役に対し提起された株主代表訴訟において株式会社が取締役を補助するため訴訟に参加することの許否について判断した最決平13・1・30民集55巻1号30頁(平成13年決定)がその旨を述べている。そして、この平成13年決定において、補助参加の利益とは、「被参加人が敗訴判決を受けたと仮定した場合に、参加人の法的地位または法的利益に不利な影響が及ぶことである」、という判例の一般的基準が定立された。
 平成14年判決は、「前訴におけるXのAに対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって、YのXに対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく、前訴の判決はYの法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではない」として、一般的基準の適用の結果、参加的利益が否定されるとしている。つまり、本件では、前訴において、XのAに対する本件商品の売買代金請求が認められないということが決まるだけでは、Yに何ら事実上の影響をも与えるものではなく、Yが法律上の利害関係を有するものとはいえないという。
 もっとも、平成14年判決は、「法的地位又は法的利益」に影響を及ぼさないとするが、前訴判決の確定により、Aが買主である可能性が減ぜられるのであるから、Yに対する法的な影響が全くないとはいえないとも思える。しかし、平成14年判決は、「法的地位又は法的利益に不利な影響が及ぶ」場合を限定的に捉えている。すなわち、Xが敗訴したとしてもYの法的地位又は法的利益に不利な影響に、「論理必然的な推論が働かない」ことが、平成14年判決が参加の利益を否定した理由である。
 では、昭和45年判決の事案においてはどうであろうか。前訴が請求認容判決の確定で終わった場合、貸主であるXは借主であるYに対して瑕疵担保責任(民法559条・561条)を免れることができない。したがって、前訴での請求認容判決(Y敗訴の判決)の確定は、論理必然的に、Xに不利益な影響を及ぼすことになる。
 このように、昭和45年判決とは事案を異にするものとして、平成14年判決を位置づけることは可能である。しかし、平成14年判決の事案においては、実際的には、本件商品の買主はAとYのいずれかでしかなさそうである。にもかかわらず、平成14年判決の事案において参加の利益を否定してしまう、厳格な論理必然性のテストに依拠した判断がなされたといえる。


■参加的効力の客観的範囲
 補助参加人に対する参加的効力の客観的範囲は、補助参加の前提となっている、補助参加人の法律上の地位と訴訟における裁判所の判断事項との関係で決定される。昭和45年判決は、その参加的効力が生ずる判断事項について、「判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶ」との理解を示していた。そこでは、参加的効力が生ずべき理由中の判断について、特に限定は加えられていなかった。
 しかし、ここで示された「判決の理由」とは、判決書の必要的記載事項として挙げられている「理由」(253条1項3号)をいうものと解され、これは、主文に掲げる結論を導き出した判断過程をいうものであるから、主文を導き出すために判断を要する攻撃防御方法についての事実認定と法律判断等をもって必要にして十分ということになる。そうであるから、事実認定や判断についての説得力を増すため、あるいは当事者の納得を得るために、判断を要する攻撃防御方法以外の関連事項について示された判断、いわゆる傍論について参加的効力が及ぶものではないといえる。このことは、傍論を説示するか、傍論としていかなる事項を取り上げるのかも判決裁判所の一存に係っていることを考えると、傍論に参加的効力を肯定することは、被告知者の地位を著しく不安定にすることになるもので妥当でないことからも肯定できるものといえる。
 以上の理由から、平成14年判決は、参加的効力が生ずべき理由中の判断について、「判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではない」との限定を加えるに至ったと考えられる。
 この平成14年判決が加えた限定を昭和45年判決の事案に適用してみる。
 まず、建物所有権に基づく明渡請求との関係では、判決の主文を導き出すために必要な法律判断は、前訴事実審口頭弁論終結時にAが本件建物の所有者であったことである。また、賃料相当損害金請求との関係では、判決の主文を導き出すために必要な法律判断は、前訴の訴状送達時から前訴の口頭弁論終結時までの間、Aが本件建物の所有者であったことである。したがって、XY間の賃貸借契約締結時において、Aが本件建物の所有者であったことは、前訴の判決主文での判断を導き出すために必要な法律判断であるとは言えないのではないか、という疑問が残ることになる。
 しかし、所有権に基づく明渡請求訴訟などにおいては、原告は、訴え提起前から自らが所有者である旨を主張するのが通例であり、昭和45年判決の前訴においても同様である。本件建物はAがXの関連会社Bから請負って建築した建物であるところ、請負契約にトラブルを生じたために完成時の所有者が誰であるかが前訴での争点となったのであるが、前訴確定判決は、その理由中で、本件建物完成時における所有者はAであり、かつ、その後の所有権喪失事由の主張立証がないことから、建物完成後もAが本件建物の所有者であり続けたと判断している。そして、この本件建物完成時からAが所有者であり続けたという理由中の判断が、明渡請求との関係でも、賃料相当損害金請求との関係でも、判決の主文を導き出すために必要な法律判断である。


■被告知者に対する参加的効力(山本克己・法教302号95〜96頁)

 平成14年判決の判旨は、補助参加の利益と参加的効力を生ずべき判断の範囲の両面において、限定的に解した理由は何であろうか。ここでは、かかる理由として、被告知者に参加的効力が及ぶとする53条4項に内在する問題点に、最高裁が配慮したのではないか、という仮説を立てることにする。
 補助参加の申出があった場合において、裁判所が補助参加の利益の有無について判断を下すのは、被参加人ないしその相手方当事者が補助参加に異議を述べた場合に限られる(44条1項前段)。このことは、補助参加の利益が被参加人とその相手方当事者の利益を保護するための要件であることを物語っている。すなわち、被参加人とその相手方当事者は、第三者の介入を受けずに訴訟を追行することに対する利益を有しているところ、被参加人とその相手方当事者のかかる利益にもかかわらず、補助参加人が被参加人とその相手方当事者の聞の訴訟に介入できることを正当化する要件が、補助参加の利益の利益であるのである。このことは、訴えの利益が、少なくとも一面において、被告に対して応訴強制を働かせることを正当化する要件(被告保護のための要件)であることと類似している。
 他方、53条4項は、被告知者に補助参加の利益があるときは、補助参加をしなかった被告知者について補助参加を擬制することを通じて、参加的効力を被告知者に及ぼすこととしている。
 昭和45年判決が言うように、参加的効力は、補助参加人が被参加人との関係で、被参加人が敗訴したことの責任を分担することを内実とするから、参加的効力は補助参加人に不利な判断について生ずることになる。自ら参加申出をした補助参加人にかかる不利な効力を及ぼすことには、一定の合理性がある。不利な効力を受ける可能性があるにもかかわらず、自らの判断で進んで、補助参加をしたと言えるからである。
 これに対して、補助参加をしなかった被告知者は、望んで、訴訟告知を受けたわけではないから、自ら積極的に補助参加をした者と同列に論ずることはできない。むしろ、補助参加をしなかった被告知者の立場は、望んだわけでもないのに訴訟当事者にされてしまい、期日に欠席すればいわゆる欠席判決によって請求認容判決(つまり、自らに不利な判決)を下されてしまうことがある被告の立場に、類似していると言わなければならない。
 したがって、仮に補助参加をしない被告知者にも参加的効力を及ぼすべきであるとしても、このことを、任意参加の亜種として捉えるべきではなく、強制参加ないし訴訟引込みに類似するものとして捉えるべきであるから、その要件は、被参加人とその相手方の保護の要件である補助参加の利益の存在ではなく、告知者の側の利益(被告に対する関係での訴えの利益に相当するような利益)の存在でなければならないと考えられる。その意味で、53条4項の合理性には疑いがある。
 このように考えると、平成14年判決は、表面的には、補助参加をしなかった被告知者と積極的に補助参加をした者を区別してはいないが、その背後には、53条4項に対する立法論的な疑義があり、かかる疑義が平成14年判決をして二段階の限定を加えさせたのではないか、という推測にも一定の説得力があるように思われる。
 もっとも、平成14年判決の事案においては、Xには、AとYの両方に敗訴すること(両負け)を回避したいという利益があると考えられるから、この利益を重視すれば、Yが買主であるとの判断についてYに参加的効力が及ぶことを肯定することにも、かなりの合理性があると言えよう。