【勉強の記録】民事系論文対策【残り334日】

事例研究民事法問題3 なりすましによる登記移転
法学教室 民訴と会社

メモ

訴訟物に準ずる効力

審判対象たる訴訟物に対する判断に既判力という効力が生じて、後訴でその判断に反する主張をすることができなくなる。
それだけでなく、判例は、「訴訟物に準ずるものとして審判の対象になる」場合にも、既判力に準ずる効力として、前訴と矛盾する主張を後訴ですることは認めない。
前訴において相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確定した後において、債権者が、前訴の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法921条の法定単純承認の事実)を主張して、当該債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起した事案で、判例

 前訴の訴訟物は、直接には、給付請求権即ち債権(相続債務)の存在及びその範囲であるが、限定承認の存在及び効力も、これに準ずるものとして審理判断されるのみならず、限定承認が認められたときは主文においてそのことが明示されるのであるから、限定承認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし、また民事執行法35条によると、確定判決に対する請求異議の訴は、異議を主張することを要する口頭弁論の終結後に生じた原因に基づいてのみ提起することができるとされているが、その法意は、権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにあると解すべきであり、右趣旨に照らすと、債権者が前訴において主張することのできた前述のごとき事実を主張して、前訴の確定判決が認めた限定承認の存在及び効力を争うことも同様に許されない。

としている。
訴訟物に準ずる効力が認められるケースは、主文にもその判断が示されている場合のようで、
不執行の合意を主張したケースでも

 給付訴訟の訴訟物は、直接的には、給付請求権の存在及びその範囲であるから、右請求権につき強制執行をしない旨の合意(以下「不執行の合意」という。)があって強制執行をすることができないものであるかどうかの点は、その審判の対象にならないというべきであり、債務者は、強制執行の段階において不執行の合意を主張して強制執行の可否を争うことができると解される。
 しかし、給付訴訟において、その給付請求権について不執行の合意があって強制執行をすることができないものであることが主張された場合には、この点も訴訟物に準ずるものとして審判の対象になるというべきであり、裁判所が右主張を認めて右請求権に基づく強制執行をすることができないと判断したときは、執行段階における当事者間の紛争を未然に防止するため、右請求権については強制執行をすることができないことを判決主文において明らかにするのが相当であると解される。

として、訴訟物に対する判断ではないが、それに「準ずる」という理由で、判決主文で示され、既判力に「準ずる」効力も認められる。