いつも反省の連続の択一。の巻

さーせん。


昨日は寝てますた。


ということで、今日は模試の択一の復習。
久しぶりに解いた択一ということもあって痛感したのは、なんか知識よりも、解き方がちゃんとできていなかったということ。


今回の凡ミス
・「誤っているもを組み合わせたもの」という問いで、正しいものの組み合わせを探してた(第2問、第9問)
・正解肢の内容を理解していたのに、読み間違えて違う肢を選択(第30問)

合計7点の失点…
絶対評価として計算されるこの7点、実質その半分の3.5点だけれどすごい大きいと思う。論文だと小さい論点のあてはめ部分くらいの点数に匹敵するんじゃないかと…


こんだけ択一の模試や復習やっても、覚えては忘れての連続。だが、その成果は点数として出てるようでうれしい。


今回の復習はだいたい正確に答えられてたので、ゆっくりじっくり条文の復習も兼ねてやってた。


恥ずかしながら新たな発見。というか、適当にしかやってなかったところが発見できた。
隔地者間における意思表示の効力発生時期と申込みの特則規定の意味。

97条1項が意思表示の効力発生時期は到達時という原則を定める。意思表示の効力は到達主義が原則ということ。したがって、解除の意思表示や取消しの意思表示、相殺の意思表示等は、その意思が相手方に到達して効力が生じるということになる。まぁここまでは常識レベルとして理解しておかねばならない知識。


問題は、97条2項と525条の関係。
97条2項は、

隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

と定める。
表意者の死亡、または行為能力の喪失という事情があっても、「そのためにその効力を妨げられない」、つまり、この表意者の死亡や行為能力の喪失という事情を意思表示の効力として考慮しないということを意味する。

したがって、意思表示の発信者が当時生存していて、その発信後に死亡したとしても、相手方に対する意思表示の効力に影響を与えないということになる。つまり、死亡した者による意思表示だから無効となるとは考えずに、生存していた時点の意思表示として効力を有するものとして扱うということを意味する。
同様に、行為能力者が意思表示を発信した後、表意者が制限能力者になったとしても、その意思表示は制限能力者によるものと考えず、行為能力を有していた発信当時の意思表示として扱うということだ。


「そのためにその効力を妨げられない」としか書いていないから、その具体的意味について考えたことはなかったけれど、どうやらこういうことらしい。


で、その特則として525条は、

第97条第2項の規定は、申込者が反対の意思を表示した場合又はその相手方が申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には、適用しない。

と定める。遠回しな言い方だが、要するに、契約の申込みの意思表示については、以下のいずれかに該当する場合、
 ① 申込者が反対の意思を表示した場合
 ② その相手方が申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合
97条2項の原則が適用されないということだ。すなわち、この①と②の場合、申込みの意思表示については、「死亡」や「行為能力の喪失」という事情が考慮されるということになる。


内田や潮見民法をバイブルにしている自分は、その具体的帰結を考えることはなかった。内田Ⅰ(3版)45頁には、「申込みの意思表示について特則を設け、申込者が97条2項とは異なった意思表示をしてあるときや相手方が死亡や行為能力の喪失を知っていたときは、申込みの意思表示は効力を失う」と書かれてある。潮見総則69頁も「申込の意思表示については、申込者が反対の意思を表示した場合または申込の相手方が死亡・行為能力喪失の事実を知った場合には、申込の意思表示はその効力を有しない(525条)」と書かれていた。山本敬三Ⅳ-1契約35頁も、「97条2項は適用されず、申込みは効力を失う」としか書いていない。


が、厳密にはこれは誤りだ。というか、舌足らずだ。
コンメンタールなんかを読めばわかるけれど、行為能力喪失のケースだと、直ちにその申込みの意思表示の効力を有しないものとなるわけではなく、制限能力者の意思表示として取消しうる意思表示としての効力は有するので、「申込みの意思表示は効力を失う」わけではない。
97条2項が適用されない結果、行為能力喪失の事情が意思表示に影響するということを525条は定める。
その意味は、制限能力者の意思表示が当然に「無効」となることではなく、行為能力者による意思表示ではなく、制限能力者の意思表示として取消しうる意思表示と扱うということである(120条は「行為能力の制限によって取り消すことができる行為は」と定めている。5条2項、9条本文、13条4項、17条4項参照)。したがって、この場合、直ちに申込みの意思表示が無効となるわけではない。


総則では舌足らずだったしおみんだが、新世社の潮見各論Ⅰ(初版)17頁では、このことが正しく書かれてある。

申込者が申込みの意思表示を「発信」した後に死亡したり、行為能力を失ったりしたときに、(1)申込者が反対の意思を表示していた場合や、(2)申込みの相手方が死亡または行為能力喪失の事実を知った場合には、民法97条2項は適用されず、申込みはその効力を失う(死亡の場合)か、または取消可能(行為能力喪失の場合)とされています。

これが正しい意味だ。


この知識があやふやだった結果、まぁこれだけのせいではないけれど択一で2点を失った今回の模試であった。


条文を正確に理解するということの大切さを知ると同時に、基本書だけに頼ってたらやべーなという危機感が出てきた。まぁ基本的に内田、潮見御大は信頼してるけど…



余談だが、解釈論として525条の射程がどのような場合にまで適用されるかに争いがある。申込みの意思表示後、相手方にその意思表示が到達前に、申込者が死亡したり、行為能力を喪失して、相手方がその事実を知っていた場合には、本条が適用されることに争いはない。


問題とされる場面は、申込みの意思表示が相手方に到達した後に、承諾の意思表示前の承諾期間内に申込者が死亡したり、行為能力を喪失した場合で、この場合にも525条が適用されるかどうかが問題とされる。


通説は、申込者の死亡若しくは行為能力の喪失により申し込みの効力が影響を受けるのを、それらの事由が申込みの到達前に生じた場合に限定し、申込みの到達後に申込者が死亡しまたは行為能力を喪失した場合は、申込みは既に効力を生じており、影響を受けないのが原則であるとする。起草者や我妻説はこれ。