司法試験2010論文出題の趣旨がやっと出た。の巻

やっと出題の趣旨が出た。
http://www.moj.go.jp/content/000054317.pdf


合格発表後でないとだめなのか知らんけど、待ってたぜ!



さらっと読んでみた。
毎年、憲法はかなり熱気のあるメッセージだ。
生存権の問題に関して

 ここで問われているのは,立法裁量論の問題ではない。また,ここで問われているのは,「文化的」に「最低限度」であるか否かではなく,言わば「生存」そのものにかかわる問題である。

というメッセージは、法セミのあれに対するメッセージでもあるんだあろう。またやりやがったな青柳幸一。


答案戦略としても参考になることを毎回出してる。
今回もいいことが書いてあった(まぁ毎年似たような感じではある)。

憲法の答案作成上の覚書

 設問1では,原告側は一定の筋の通った主張を,十分に行う必要がある。
 設問2では,「被告側の反論を想定しつつ」検討することが求められている。「想定」される反論を書くパートでは,反論の憲法上のポイントだけを挙げればよい。そこでは,反論の内容を詳細に書く必要はない。反論の詳細な内容は,「あなた自身の見解」のパートで書けばよい。
そこでは,原告・被告双方の主張内容を十分に検討した上で,「あなた自身」の結論及びその理由を書くことが求められる。
 いずれにしても,問われるのは理由の説得力である。

原告は結構厚く、反論は論点についてポイントだけ。反論の詳細と、自分の考えを「あなた自身」の見解として書け、ってことね。
それにしても、設問1も「十分に」原告側の主張を展開しろとか、法セミの答案に対するダメ出しとしか……
まぁ、あれを真似されると困るという青柳的危惧は察するけど。

民事系の大大問の設問1

以前、民事系の大大問の設問1で、事実②は正当理由の評価障害事実の判断材料になると思うって日記で書いたけど(http://d.hatena.ne.jp/nihyan/20100901/p1)、そういう理解もありのようだ。

権限外の行為の表見代理構成においては,事実①は2000万円の融資についてCに代理権があるものと信ずる正当な理由があるとする評価を根拠付ける事実である意義を有し,それとともに,事実①はAがCに1500万円の限度における代理権を授与したことを推認させる間接事実である意義を有するとも考えられる。また,事実②はCに2000万円の借入れの権限があるかどうかをFが調査しようと試みたことを意味するものであるから,他の事情とあいまって,正当理由を根拠付ける一つの事実である意義を有するものとも考えられる。反対に,事実②のうち携帯電話がつながらないことは,Cの不審な挙動を示唆するものとみることができないものではないから,それにもかかわらずA本人との接触に成功しないまま融資を敢行したこととあいまって,正当理由の評価障害事実になるとする性質把握も一定の説得力を持つ。そこで,適切な理由が付されて解答されているかが問われることになる。

民事系の大大問の設問4小問(1)

あと、俺を苦しめた民訴の難問、債務不存在確認請求の既判力の問題について

小問(1)は,第3訴訟の被告Fの訴訟代理人弁護士Qが提示した最高裁判例とは異なる内容の法律構成①と法律構成②のそれぞれについて,被告側の法律主張(つまり,党派的な主張)としての適否を検討することを求めている。そこでは,最高裁判例の立場を確認した上で,法律構成①については,量的に可分な給付請求権に関する一部請求後の残部請求をめぐる議論状況との対比の下に,全部認容判決である前訴確定判決が自認部分についても判断を下しているといえるかどうかを検討することが求められ,法律構成②については,請求の放棄構成の技巧性について検討するほか,請求の放棄について既判力が認められるかどうかを,そこで問題となる既判力の概念と絡めながら検討する(その際,調書の作成がないことや既判力の基準時についても検討する)ことが求められている。

おお、この点は法セミの解説も役に立ちそうだな。
セミの解説でも、ちゃんと「一部請求とパラレルに考えられる問題」って書いてる。この意味は、新堂326頁を参照すればわかるらしいが、要するに、ここでいう一部請求の理解も新堂説、ひいては高橋説のような残部請求否定説の考えを前提にすればわかるってことらしい。
そんなの知ってないとパラレルには持っていけねー。というか、発想できねーって。
というか、結局、新堂の考えを知っとけよ、みたいな意識?それとも、その問題文で、それくらいたどり着けみたいな?大変だぜこりゃ。
高橋重点講義も新堂説の解説書みたいな要素あるし、塾じゃない伊藤信者の俺にとっては泣きそうだ。伊藤先生の一部請求も残部に既判力及ぶって見解だけど、ちょっと違うし。
まぁ、一部請求の問題にとって、残部請求全部否定説の考えは学説だから知らんってのじゃダメってことなんかね。
そうすると、債務不存在確認の既判力の生じる範囲の学説と、この一部請求の学説の議論はちゃんと押さえとけってことか。明示と黙示、あとは信義則、みたいな判例でいいじゃんかという理論的妥協を許すまじということですね、わかりました。
でも、普通、「申立事項=訴訟物=既判力」って考えるんじゃね?申立事項と訴訟物を別個に理解してるなんて前提を法律構成①で見いだすなんて知ってなきゃムリだろ、その発想。
とりあえず、こういう難問にぶち当たったときのことをもう少し考えよう。


それにしても、問題文読んだときのことを思い出すと恐くなる。わけわかんなかったもん。

Q: では,二つの法律構成を説明します。
第1の法律構成(法律構成①)は,第1訴訟の訴訟物は元本返還債務の全体であっ
て,Aの「1500万円を超えては存在しない」ことの確認を求めるという請求の趣
旨は,例えば「1200万円を超えては存在しない」というような,より原告に有利
な判決を求めないという意味において,原告が自ら,請求の認容の範囲を限定したも
のにすぎない,というものです。このように考えると,既判力の対象はあくまでも,
元本返還債務の全体ですから,第1訴訟の確定判決の既判力によって,「平成20年
4月11日の時点で元本債務は1500万円であった」ということが確定されること
になります。
第2の法律構成(法律構成②)も,やはり第1訴訟の訴訟物は元本返還債務の全体
であるとするのですが,同債務のうち1500万円についてはAが請求を放棄したた
めに,実際に審判対象となったのは1500万円を超える部分だというものです。こ
のように考える場合には,第1訴訟の確定判決の既判力の客観的範囲は元本返還債務
のうち1500万円を超える部分だけになりますが,請求の放棄,正確には請求の一
部放棄の既判力により,元本債務の金額が1500万円であったことが確定されるこ
とになります。
理解できましたか。
S: はい。

Sすげえよ。「はい。」って。この説明だけじゃ、ワケわかめ、意味しじみでした。
こっから、一部請求後の残額請求が否定される場合の処理の理解にまでつなげるって、新堂326頁を読んでないと絶対ムリだろ。

刑訴の伝聞

 本問では,検察官が,「甲乙間の本件けん銃譲渡に関する甲乙間及び甲丙女間の会話の存在と内容」という立証趣旨を設定して本件捜査報告書の証拠調べを請求したところ,弁護人は,これに不同意の意見を述べている。本件捜査報告書は,作成者である司法警察員KがICレコーダーや携帯電話の録音内容を聞いた上で,これを反訳したものであり,捜査官が五官の作用によって事物の存在及び状態を観察して認識する作用である検証の結果を記載した書面に類似した書面として,刑事訴訟法第321条第3項により,作成者Kが公判廷で真正に作成されたものであることを供述すれば証拠能力が付与されるという捜査報告書全体の性質をまずは論ずる必要があろう。
 その上で,本件捜査報告書には,甲乙間及び甲丙女間の会話部分並びに乙によるその会話内容の説明部分が含まれていることから,これらの部分の証拠能力について,更に伝聞法則の適用があるか否かを要証事実との関係で検討する必要がある。要証事実を的確にとらえれば,甲乙間及び甲丙女間の会話部分については,会話内容が真実かどうかを立証するものではなく,甲乙間及び甲丙女間でそのような内容の会話がなされたこと自体を証明することに意味があり,会話の存在を立証するものであるから,この会話部分は伝聞証拠には該当しないとの理解が可能であろう。これに対して,乙による説明部分については,正に乙が知覚・記憶し,説明した会話の内容たる事実が要証事実となり,その真実性を証明しようとするものであるから,伝聞証拠に該当すると解した上で,伝聞例外を定める刑事訴訟法第321条第1項第3号によりその証拠能力の有無を検討することになる。同号の各要件については,乙の死亡や会話部分にはけん銃という言葉など聞き取れない部分があること,乙による説明は会話に引き続きなされており,その内容は直前の会話内容と整合するとともに,乙方でりんごの箱とともに発見されたけん銃2丁などの客観的状況とも整合するといった具体的事実を的確に当てはめ,その証拠能力を検討しなければならない。

「甲乙間及び甲丙女間の会話部分」と「乙によるその会話内容の説明部分」をちゃんと区別して論じることが、伝聞を理解しているかを示す上でのポイントみたい。
この点については、法セミの解説はちゃんと区別できてたが、論じる順番が出題の趣旨と正反対だ。
出題の趣旨では、

1 おとり捜査の適法性
  ↓
2 捜査報告書の証拠能力
(1) 書面について
  ↓
(2) 各供述について

って流れで、設問の問われ方をみても、これが普通だと思う。
けど、辰已の採点シートとか、法セミはこの流れじゃない。
辰已や法セミは、

1 伝聞
 ↓
2 おとり捜査

って流れ。
まぁ、明文の問題から先に検討するってことなら、伝聞→証拠禁止って流れでこの流れもありか。
でも、証拠能力の問題を論じる上で、「前提となる捜査の適法性」を論じろという設問だから、出題の趣旨で示してる通り、先におとり捜査について書くのが普通と思う。


まぁ、書く順番は置いといて、今回も伝聞でますた。もう伝聞はガチです。はい。


予備校でも、色々伝聞の問題出されてるのに、それでも本番でやっぱり聞いてきます。いわゆる「予備校はずし」をしない考査委員たち。
何回も解いているはず。なのに、ムズイ。何がムズイって、要証事実の把握が……
もう、何回基本書で伝聞のところを読みまくったかわからんくらい読んだけど、それでも自信ねー。
出るとわかってても、書けない。それが伝聞かも。だから出すんだな考査委員め。そりゃ仕方ないや。


それにしても、問題は時間配分。
今年はかなりきつかった。
来年は2時間ジャストで書ききらないとダメだから、もっと書く練習しないと。
うまいこと端的に論じるためにも、もう少しキーワードを押さえておかないと。いちいち自分の言葉で表現してたら、ダラダラ時間と分量だけとってしまうし。


そう。この日記のように。


ということで、とりあえずここまで。