【勉強の記録】吸収合併と機関についてやった。の巻【残り231日】

今日も会社法の勉強。


苦手な組織再編。
昨日は会社分割やって、今日は吸収合併の問題をやってた。

■問題

吸収合併の効力発生日後で、かつ、その登記前に、消滅会社の代表取締役が消滅会社の所有する不動産を第三者に譲渡した場合の法律関係は、どのようになるか。

合併の効果は権利義務の包括承継
効果の面では相続と似てる。


当初問題を解くとき、表見相続人による不動産処分の事例とパラレルに考えた。
つまり、「表見相続人による不動産の処分=消滅会社の代表者による不動産の処分」と考え、真正相続人が登記なくして相続による権利取得を主張し得ることとパラレルに、真正相続人=存続会社とみて、存続会社は合併による権利を第三者に主張できる。
と構成して答案を書いた。
合併の効力発生の後の話だから、「登記に公信力なし」って話をそのままここでも使えると思った。
しかし、そもそも消滅会社が表見相続人と同様だとはいえない。相続の問題とパラレルに考えると、消滅会社は被相続人と同じに考えることができるわけで、被相続人は表見相続人でない。
よって、この考えは完全に間違えだ。
さらに、後述の通り、消滅会社の消滅については特則があって、それがこの問題に影響する。



ということで、とりあえず基本から考えてみる。
相続の場合、例えば、被相続人が死ぬ前に第三者に不動産を譲渡した後に登記を移さないまま死んだケースとすると、

権利義務が、被相続人→相続人に包括承継
  ↓
相続人は民177条の「第三者」ではなく当事者
  ↓
譲受人たる第三者は相続人に不動産の所有権を主張できる


これを合併で考えると、ちょっとアレってなるとこがあった。
法律上、合併契約で定めた効力発生日に、合併の効力が発生することにはなってる(750条1項・752条1項)。
吸収合併の効力は、消滅会社から存続会社への権利義務の包括承継と、消滅会社の解散(471条4号)がある。消滅会社は解散と同時に消滅する(精算手続きなし)。
そうすると、合併の効力発生後になされたとされる、消滅会社の代表取締役の行為は、もはや法律上では存在しない法人の代表行為として、一種の無権代理行為と類似の関係になりそう。つまり、死亡した者を代理する行為と同じみたいな。
そうすると、効力発生日後の消滅会社の代表取締役がした譲渡行為は無効となり、第三者は消滅会社から不動産の所有権を取得したことを主張できないとなりそうだ。


ところが、この吸収合併の効力は、契約で定めた効力発生日に生ずるが、消滅会社による解散(消滅)は、解散登記の後でなければ、第三者にその解散による消滅を対抗できないとされている(750条2項・752条2項)。
ということは、合併による解散の登記がない以上、第三者との関係では、「消滅会社は解散(消滅)していないことになる=生きてる者の行為」となる。そうすると、存在する消滅会社の代表取締役の行為として有効となるとも考えられる。
そう考えると、解散登記前である限り、第三者は自己が消滅会社から有効に承継取得したことを理由として、不動産の所有権を主張できるということになる。
そこで、この第三者の不動産取得につき登記(民177条)が必要かが問題となるところ、上述の通り包括承継の場合、「当事者」と同視される結果、登記なくして対抗できると解される。

まとめ

1 消滅会社からの譲渡の有効性
合併によるによる解散登記なし
  ↓
合併により解散・消滅したことを、第三者に主張できない
  ↓
存続会社との関係では、第三者の消滅会社からの不動産取得が有効に帰する
2 民177条の対抗問題
消滅会社=存続会社
  ↓
存続会社は民177条の「第三者」に当たらない
  ↓
三者と存続会社は対抗関係に立たない

ということで、登記なくして、第三者は存続会社に対して、不動産の所有権を主著できるとなる。


という感じで、問題を考えていたら、解説ではややこしいことが書いて、そこで書かれてある江頭773頁を参照すると

効力発生日後・当該登記前に消滅会社代表者が第三者に対し右の行為(消滅会社所有の不動産の譲渡)を行った場合には、その行為と合併による一般承継との関係が二重譲渡に類する関係となり、……対抗要件の問題となる。

こう書かれてある。対抗要件の問題ということは、登記を先に具備したかで決するって問題を指しているか、それとも包括承継をした存続会社は民177条の「第三者」には含まないという問題まで含めて指摘しているのかよくわからん。法教の解説もよくわからんみたいなツッコミ入れてた。


色々悩んでたら、1000問の道しるべ704頁にこのことについて書かれていた。

■解説

 吸収合併による消滅会社の消滅の効果については、合併の登記をするまでの間は、第三者に対し、その善意・悪意を問わず、対抗することができないこととされている(750条2項・752条2項)。
 したがって、設問の事例においては、売買契約は有効であり、合併の登記前に置いては第三者との関係では法人格の消滅を対抗することができない消滅会社が、合併の登記後においては存続会社が、消滅会社の代表者と取引をした第三者に対して不動産を引き渡すべき義務を負うこととなる。

ここでは、第三者が不動産の所有権登記を具備したかどうかについて問題としていないが、民177条の「第三者」に包括承継人が含まれないことに争いはないので、登記の具備がなくても存続会社は当事者として、第三者への不動産所有権の移転を否定できないということでいいんだろう。


江頭本は、知りたいことを端的に示してくれてる点や、実務の配慮がかなりされてる点、あと手続法等の会社法以外についても詳しく載ってて、すごくいいなと思ったけど、この問題については舌足らずだったな。


午後は、肢別の続き。
今日は、役員等の機関関係。
機関設計の自由度って、非公開会社や、大会社以外って要素によって広がって、
公開会社や、大会社って要素で制限されるんやね。
会計参与を加えるパターンを除くと、
大会社かつ公開会社では、設置できる機関設計は2パターンだけ。監査システムを監査役会にするか委員会にするかの選択肢だけってことね。
逆に、非公開会社かつ大会社以外の場合、機関設計は9パターンもある。
これは会社の内実が反映された結果としてみることができる。つまり、大会社等の会社は利害関係者が多数で、それらの利害関係人に配慮した機関設計が要請されるのに対して、大会社以外の小規模閉鎖会社ではそういった利害調整の配慮は不要で、定款自治で勝手にやりたいようにできるってことだろう。
委員会設置会社の機関設計は、常に、取締役会+会計監査人+委員会で、公開かどうか、大会社かどうかによって、全部で(2×2)4パターンしか委員会設置会社はない。


あと、取締役についてのルールが、ほとんど監査役でも当てはまったり、会計参与は権限なんかは監査役に似てるけど、任期とかは取締役と同じだったりと両方のルールが妥当したりと、何がどれと同じかさえ押さえておけばかなり応用が利くってことを江頭読んで気づいた。というか、みんなはこんなことわかってて当たり前なんかな。
何回も似たような択一の肢にひっかかっている俺なんて、何回見ても条文の知識はうすっぺらいままだわ。


あ、もう寝ないと……