【証拠隠滅罪】前田元検事は有罪だけど執行猶予?の巻【まとめ】

証拠改ざん:前田元検事を証拠隠滅罪で起訴 懲戒免職も

2010年10月11日 15時46分 更新:10月11日 22時40分


前田恒彦元検事=2010年9月撮影 郵便不正事件に絡む証拠改ざん事件で、最高検は11日、事件を大阪地検に移送したうえで、同地検特捜部元主任検事、前田恒彦容疑者(43)=大阪府枚方市=を証拠隠滅罪で大阪地裁に起訴した。これに先立ち法務省は同日、前田検事を懲戒免職処分とした。


 起訴状などによると、前田元検事は09年7月13日、大阪地検の庁舎内で、大阪地裁に公判係属中の厚生労働省元係長、上村勉被告(41)らによる事件の証拠のフロッピーディスク(FD)内に記録されていた「偽証明書」の文書ファイルの最終更新日時「04年6月1日1時20分6秒」を、パソコンとソフトウェアを使って「6月8日21時10分56秒」に改変するなどし、他人の刑事事件の証拠を変造したとしている。


 郵便不正事件で検察側は、厚生労働省村木厚子元局長(54)=無罪確定=が04年6月上旬ごろ、偽証明書の作成を部下だった上村被告に指示したとの構図を描いていた。最高検は、前田元検事がこうした構図に合うよう意図的にFDのデータを改ざんしたとみて、先月21日に逮捕していた。


 関係者によると、前田元検事は起訴内容を認め、「不利な証拠を消したかった」などと動機を供述しているという。


 起訴を受け柳田稔法相は「職務の厳正・清廉が強く求められる検察官が事件の証拠物を改変したことは考えがたいあるまじき行為で、国民の検察への信頼を大きく裏切り誠に遺憾。国民の失望感や怒りをしっかり受け止め、関係者の処分は最高検の捜査も踏まえ厳正に対処したい」とのコメントを発表した。
http://mainichi.jp/select/today/news/20101011k0000e040028000c.html

とうとう起訴に至ったということで、どういう罪でどう判断されるのかについてまとめてみる。

今回、起訴された罪は、証拠隠滅罪。刑法104条には、

 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

とされている。窃盗罪が10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であることと比較すると、軽い罪のようだ。


他人の刑事事件に関する「証拠」とは、捜査・裁判機関において刑事事件の処理に関連して用いられ得る一切の資料をいう。情状に関する資料も含む。人的証拠としての証人、参考人も含む。
今回、証拠隠滅が問題とされた事件は虚偽公文書作成の罪である。そこでは、被告人の指示に基づく虚偽公文書の作成が争点とされていた。
そして、今回改ざんされたフロッピーディスクは、その指示の存否に関する事実の証拠であった。
したがって、刑事事件の処理に関連して用いられ得る資料に当たる。
偽造公文書の偽造じゃないから証拠隠滅にならないという人がいるが、完全に誤りである。このことは、刑事事件の処理に関連して用いられ得る一切の資料が、ここでいう「証拠」になることから明らかである。


104条によると犯罪とされる行為(実行行為)は、証拠を「隠滅」「偽造」「変造」することとされている。つまり、このような行為自体が犯罪行為となると定められていることから、証拠として使用されたかどうかは問われない(なお、偽造証拠の使用も犯罪行為とされている)。


「隠滅」とは、証拠の顕出を妨げまたはその価値を滅失・減少させる行為をいい、証拠の隠匿を含む。
「偽造」とは、実在しない証拠を実在するかのように作出すること、「変造」とは、真正な証拠に加工して証拠価値に変更を生じさせることである。すなわち、既存の証拠に改ざんを加えて証拠としての効力に変更を加えることが「変造」ということになる。


本件の場合、既存の証拠たるフロッピーの改ざん行為が行われているので、「変造」に当たる。


改ざんした日付の記録が残っているから、証拠隠滅じゃないという人もいるが、これも誤り。証拠価値が変更している以上、変造に当たらないということはできない。



前田被告人は、「検察にとって不利な証拠だと気付かれると公判が紛糾するため、改ざんした」と供述しているらしいし、証拠の変造する故意があったことは明らか。


ということで、有罪になりそうですな。
ただ、かなりマイナーな罪で、しかも軽罪やし、執行猶予はつきそうやなぁ。