これは出ないか(刑法)。の巻

新試の時事ネタは憲法やけど、刑法でもでないかな?
択一くらいでは出るかもな。証拠隠滅罪。

参考人の虚偽供述と証拠偽造罪

■事実の概要

Xが自己の覚せい剤取締法違反の罪で逮捕・勾留中、同房となったYから、同人の覚せい剤使用の事実に関し、覚せい剤を風邪薬だと言ってYに渡したとの虚偽の供述を取調べの際にしてほしい旨の依頼を受け、それに応じて右虚構の事実を取調検察官に対して供述し、その旨の検察官調書を作成させた。

■争点

他人の刑事被疑事件について、参考人として検察官に虚偽の供述をし、その旨の供述調書を作成させた行為について、証拠偽造罪は成立するか

■判旨

 「参考人が捜査官に対して虚偽の供述をすることは、それが犯人隠避罪に当たり得ることは別として、証憑偽造罪には当たらないものと解するのが相当である。それでは、参考人が捜査官に対して虚偽の供述をしたにとどまらず,その虚偽供述が録取されて供述調書が作成されるに至った場合、すなわち、本件のような場合は、どうであろうか。この場合、形式的には、捜査官を利用して同人をして供述調書という証憑を偽造させたものと解することができるようにも思われる。
 しかし、この供述調書は、参考人の捜査官に対する供述を録取したにすぎないものであるから(供述調書は、これを供述者に読み聞かせるなどして、供述者がそれに誤りのないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができるところ、本件にあっても、Xが供述調書を読み聞かされて誤りのないことを申し立て署名指印しているが)、参考人が捜査官に対して虚偽の供述をすることそれ自体が、証憑偽造罪に当たらないと同様に、供述調書が作成されるに至った場合であっても、やはり、それが証憑偽造罪を構成することはあり得ないものと解すべきである。」
として、他方で、被告人Yの行為が悪質な捜査妨害と認めつつも、結論として無罪とした。

 参考人の捜査官に対する虚偽の供述が証拠隠滅(偽造)罪を構成するか否かという問題について、従来の多数の考え方は、証拠隠滅罪における証拠とは、証人・参考人らの人証を含むが、それは証拠方法を意味するにとどまり、証拠資料としての証人・参考人の供述そのものは含まれないこと、刑法は宣質して虚偽の供述をした証人のみを特に偽証罪で処罰することとしたものであること等を根拠として、参考人が虚偽の供述をしたにすぎない場合は、証拠隠滅には当たらないとしていた(最二小決昭28・10・19刑集7巻10号1954頁)。本判決も同様の根拠に基づくものと思われる。
 虚偽の供述が供述調書等に書面化された場合、右供述調書を作成させたことが証拠隠滅(偽造)罪を構成するかについて、本判決は、「供述調書は、参考人の捜査官に対する供述を録取したにすぎないものである」ことから、虚偽の供述をしたにすぎない場合と同視しうるとして、証拠偽造罪には当たらない旨判示した。
 これに関しては、刑事事件の証拠とするために民事事件において虚偽の認諾を行い、その旨の調書を書記官に作成させた行為(大判昭12・4・7刑集16巻517頁)や、他人の刑事事件の参考人として検察官から上申書の作成、提出を求められた者が、虚偽の内容を記載した上申書を提出した行為(東京高判昭40・3・29高刑18巻2号126頁)について、証拠隠滅罪の成立を認めた裁判例との整合性が問題となるが、本判決はその点について特に触れていない(なお、前掲千裏地判平8・1・29は、前掲東京高判等の事例について、「参考人が取調べ等以外の場で、当初から虚偽の書面を作成することを企てて打ち合わせた上、虚偽の内容を昏面に表現した事案であり、供述が書面等に転化した場合ではないから、当裁判所の見解と矛盾するものではない。」とする。)。