裁判員制度の実際。――求刑よりも重い刑を科す例もある。の巻

この前、択一のゼミで、

 危険運転致死傷罪って、裁判員裁判の対象になるのか?

って話になった。


確か、
死刑・無期の自由刑のような犯罪以外は、
短期1年以上の自由刑で、かつ、故意の犯罪行為で死亡させた場合
裁判員裁判の対象だったはず。


あれ?危険運転致死傷罪って故意犯だっけ?


条文を読む限り故意犯だと思ったが、ゼミにいた仲間は業務上過失致死傷罪の重い版みたいなイメージだからか、故意犯じゃなくね?みたいな感じだった。



が、ウィキ見たら、やっぱり故意犯だった。
で、危険運転致死のケースは、短期1年以上の有期懲役ということなので、裁判員裁判の対象になるみたい。
実際、裁判員裁判がなされたケースもあるようだ。



こんなのを調べていたら、実際の裁判員制度の運用がわかるサイトを発見。
http://www.geocities.jp/masakari5910/satsujinjiken_saibanin1.html
例えば、ここでは2009年8月6日〜2010年12月27日までの求刑と判決における量刑の異同が載っている。
これみてわかることは、不当に軽い量刑相場にも、不当に重い量刑相場にもなっていない。
もちろん、個々の事件で、その事実認定等が異なるわけで、一概には言えないが、当初予見していたような不当に軽い判断がなされているわけではないことはわかる。


そして、何より死刑が求刑されたケースがそのことを裏付けている。
当初は、死刑判決を嫌がるため、死刑判決がされなくなるといった可能性を示唆する人もいたが、その予見は的外れに終わった。


先のサイトでわかるが、死刑を求刑したものが5件。
そのうち、3件が死刑判決。1件が無期懲役。1件はなんと無罪である。


これも、個々の事件を一緒くたにして論じることはできないが、これだけでわかることは、死刑判決を嫌だということだけで、死刑をしないというような方向で裁判員裁判がなされていないと推測されるということ。
もちろん、裁判員全員死刑廃止論者であれば、死刑判決が出る可能性は著しく低くなると予想されるが、死刑存置論者が多数を占める世論においては、そのようなことに至ることも少ないんだろうということがこの事実から推測される。


むしろ、真剣に裁判員たちが議論しあって、最後の最後まで全員が考え抜いて納得した結果が、死刑の求刑された事件かどうかに関わりなくなされているんだろうと思う。
そう考えると、求刑通り死刑が出ることもあれば、場合によっては無罪もでるということも当然の帰結といえる。


ちなみに
http://www.geocities.jp/masakari5910/citizen_judge_hanrei_shikei.html
ここをみればわかるけれど、求刑が無期懲役のケースでは、ほとんどそのまま求刑通りになっている。罪質が悪質なものがほとんどだから、まぁ普通といえば普通の判断かもしれない。


処罰したくない人の自由を主張する人もいて、色々と問題もあるけれど、結果的には、裁判員制度で刑事事件は良い方向に向かっていると思う。


こんなことを書いている最中、ふと思ったことがある。

求刑より重い刑を科すことってできるのかな?

ウィキ見るとあるようだ。

求刑超え判決の例

1996年11月 交通死亡事故で京都地裁の懲役3年判決(求刑懲役2年6か月)
2001年2月27日 山陽道死亡事故で大阪地裁の懲役1年10か月(求刑禁固1年6か月)
2005年9月9日 JR阪和線置石事件で大阪地裁の懲役3年判決(求刑懲役2年)
2007年7月27日 ペッパーランチ事件で大阪地裁の懲役12年判決(求刑懲役10年)
2007年10月2日 外山恒一道路交通法違反事件で鹿児島地裁の罰金15万円判決(求刑罰金1万5000円)
2010年5月19日 さいたま市強制わいせつ致傷事件でさいたま地裁の懲役8年(求刑懲役7年)
2010年9月14日 秦野市模型店主殺害事件で横浜地裁の懲役20年(求刑懲役18年)[裁判員裁判]
かつては無期懲役の求刑に対し、死刑判決が言い渡された事例もあった。

1946年11月14日 大阪地裁 知人夫婦殺傷事件で男に死刑判決
1947年7月8日 秋田地裁 強盗殺人事件で20歳の男に死刑判決
1957年3月20日 仙台地裁 連続強盗殺傷事件で黒人米兵と愛人女性に死刑判決(控訴審で両名とも無期懲役
1957年12月28日 東京地裁八王子支部 強姦・殺人事件で27歳の男に死刑判決(控訴を取り下げ死刑確定)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%82%E5%88%91#.E6.B1.82.E5.88.91.E8.B6.85.E3.81.88.E5.88.A4.E6.B1.BA.E3.81.AE.E4.BE.8B


まぁ、求刑って単なる検察官の意見にすぎなくて、量刑判断は裁判所の職責だから論理的には求刑より重い刑を科すことが可能だとは思ったけど、実際にあるとは思わなかった。
しかも、裁判員裁判でも求刑以上の刑を科した例があったなんて、ニュースでも見たことなかったわ。
こりゃ当初の予想よりもむしろ被告人にとっては、厳しくなったのかもしれないな。