ネット上でぶっ殺すと脅せば犯罪となるか?の巻

Twitterを利用したリアルタイムQ&A

Q 嫌がらせのツイートを受けて、ぶっ殺すと脅せばそれは殺人予告になるのでしょうか?
http://qa-now.com/d/623647

こんな質問がされていた。
ぶっ殺すと脅す行為が犯罪になるかどうか、ってことなら答えは「犯罪になる場合がある」というのが正解になる。つまり、犯罪になる場合もあるし、ならない場合もあるってことだ。
しかし、それは脅迫罪の害悪の告知(人の生命等に害を加える旨を告知)にあたるかどうかの問題だから、殺人予告になるかどうかは直接関係ない。


刑法222条の「生命……に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」といえるのなら、脅迫罪が成立する。
だから、「ぶっ殺す」という人の生命を侵害する旨を告知すれば脅迫罪が成立する可能性がある。


ただ、害悪の告知と認められるかは、諸事情によって異なるので、形式的に「ぶっ殺す」と言っただけで直ちに害悪の告知と認められるわけではない。
この告知される害悪は、一般に人を畏怖させるに足りる程度でなければならない。判例は、告知内容自体に加え、告知の日時・場所・方法、相手方の事情、告知者と相手方の関係、告知時の状況、それに至った経緯、社会的情勢等の諸事情を総合的に考慮し、具体的な状況下において一般人が畏怖するに足りる害悪の告知か否かを判断している。
したがって、この諸事情から「ぶっ殺す」という言葉が一般人が畏怖するに足りるものでなければ脅迫罪は成立しない。
例えば、冗談や、ボケに対するツッコミとして「ぶっ殺す」と言ったところで、脅迫罪は成立しない。


また、加害の内容は、告知者の意思によってその害悪の実現を左右できるものとして告知されなければならない。それゆえ、たんなるTwitterのフォロワーに過ぎず、どこの誰かも知らない相手に、「ぶっ殺す」と言ったところで、普通、そんなことできないので害悪の告知に当たらないとされる可能性がある。
したがって、2ちゃんねるの書き込みに対して「ぶっ殺す」と書き込んでも、その実現可能性はほぼゼロなので、脅迫罪は成立しない。というか、成立すると考えると、むちゃくちゃ犯罪者が出てきそう。


したがって、「ぶっ殺す」と言った人と言われた人の関係等から結論は変わってくる。

■いいかげんな回答者なのにナイスアンサー?

上記の質問に対する回答者の中には、

殺人予告を【公的の場】で行う事は刑法にもある脅迫行為に当て嵌まる。

とか言ってる人もいたが、公的の場でなされたかどうかは関係ない。これは刑法222条をみればわかる。


また、

刑法の脅迫罪の項目を読めばぶっ殺す、だけじゃなく会ったら殴るとか言うのも脅迫罪に含まれるのは分かるんだがな

とかほざいてらっしゃる方もいたけれど、上述の通り、諸事情で害悪の告知に当たるかどうかは異なってくるので、そんな単純ではない。


あと、

ネットで誹謗中傷して、相手を精神的に参らせたら、暴行傷害の罪に問われる事もあります。

という回答者もいた。
暴行傷害の罪とは、暴行罪と傷害罪を意味するのかもしれないが、暴行罪は成立しない。暴行罪が成立するには、人の身体に対する有形力の行使がなされていることが要件として必要である。つまり、物理的な行為が人の身体に向けられて行なわれることが暴行罪の成立要件として必要ということである。
しかし、ネットで誹謗中傷しても、人の身体に対する有形力の行使は存在しない。よって、暴行罪は成立しない。
ただ、生理的機能を害したと認められれば、傷害罪が成立する余地はある。



こうやってみると、ネットって本当に誤った情報がたくさんだなと痛感。