【基本事項】続・択一勉強法。の巻【暗記編】

勉強法というタイトルですが、実はにーやんの失敗談です。
失敗から学ぶこともあるかなと。


通りすがりの名無しさんから質問がありました。

通りすがりで見つけましたが、とても参考になりました。

多分、かつてのにーやんさんと同じ道を歩いてしまっている気がします(多分ロー的な意味でも…予備校嫌いな京都のローですよね…苦笑

自分もやっぱり暗記から逃げているタイプなのかなぁと思いましたが、にーやんさんは最終的に「基本事項の暗記」を、どこから選んできて、どのように行いましたか?(例えば、基本書から抜いてきてカード作ってみたりですか?)

もしよければ参考にさせてください

非常に切実な悩みで、すべての人が通る道でもあるのかなと思います。

択一対策としての基本事項の暗記を、①どのように選んで、②どのように行ったのか?

①は過去問で出されているテーマから予測できると思います。法セミから出ている別冊の解説に載ってるコメント等から必要最小限知っておくべき事項もわかります。後、正答率が高いものは知っておくべき事項です。
②は人それぞれあると思います。
自分の場合、刑法は択一対策ノートを作ったりしてましたが、あまり意味はなかったかなと。それよりも、忘れやすい知識や、間違えやすい問題は、その解説や、暗記事項を表にしたものをトイレに貼ってました。小学生とかが日本地図覚えるみたいな感じのあれです。実はこれがかなり強力だと試験3ヶ月前に知りました。


そんな感じで、実はにーやんの場合、あまり意識して基本事項の暗記をやってません(爆)。
だから成績がなかなか上がらなかったというのもあります。が、肢別本は3〜6回くらい間違えたものを中心に繰り返していました。しかし、最後の1年は模試の復習くらいしかやりませんでした。
このように意識してあまり暗記しなかったからこそ、成績が上がるのが遅れたということです。
これは前回の日記の失敗談からわかると思います。


では、どの段階から上昇したのかというと、解き方を改めたときと、肢別本を一回りしたときの2段階あったと思います。


解き方に対する姿勢で点数が変わる。これも前回の日記で書きました。これだけで足切りレベルは回避できるはずです。
それから、肢別本を一回りして、平均を超えるようになってきたと思います。


1回目の本試験では、肢別本はほとんどやってませんでした。当時やった肢別本は、昔に解いた憲法民法だけです。そして、案の定落ちました。
その後、全科目肢別本を回しました。
今思うと、ここで暗記すべき基本事項の選別が自動的にされていたのかなと思います。
しかし、これは長い間勉強しているからこれでも結果的によかったというだけで、当初から意識して、①選別、②暗記を自分に合った形でやるべきでしょう。それが短期合格の道だと思いました。ヴェテのにーやんが言うので間違いないです!


ただ、肢別本をやって知識を得ようというのは必ずしも効率がいいとはいえないように思います。例えば、すべて暗記すればいいんだろ、みたいな発想は効率悪いです。
でも、ちょっとした意識で勉強法が変わるんじゃないかなとも思います。
そこで、意識改革ということで、当たり前の話をします。

■過去問で意識すべき基本事項の内容と範囲

肢別本は過去問の肢で作った問題集です。
その肢の問題にはいくつかパターンがありますが、多くは以下の2種類のパターンに分類できます。

  1. 基本事項そのものを問う基本問題
  2. 基本事項から推論して導く考える問題


例えば、憲法だと、重要判例の判旨のみを問う問題は基本問題です。知っていなければ話にならないというレベルということですね。
しかし、他方で、判例の趣旨から推論して正解を選択する必要があるものや、判旨に対する批判となり得るものを問うものは考える問題ということになります。
判例の趣旨として正しいかどうかといういった問題の場合、基本問題か考える問題かは相対的なものになってきます。これは肢の内容によって、判例知識のみあればすぐわかるものか、それともさらに考えて推論を要するかで変わってくるためです。



いずれにしても、基本問題も考える問題も基本事項を出発としている点で共通しています。
このように言うと、「じゃあ、過去問に出たものはすべて基本事項じゃないか!?それじゃ、細かすぎるじゃないか?」と思われるかもしれません。
その答えとしては、「原則、過去問に出たものはすべて基本事項である」ということです。法学セミナーから出ている別冊の過去問の解説なんかを見ても、ほとんどの問題でロースクール卒業生に対する問題として適切だとコメントされていることからも、問われている内容は正解すべき基本的なものというのが、ロースクールの学者、法務省の一致した見解でしょう(こういう解説コメントからも何が基本事項かわかります)。
ですから、管轄なんかは嫌だなぁと思ってても、試験に出る以上ちゃんと知っておかなければいけない知識ということになります。
しかし、それは決して過去問に出てくる知識すべてを覚えるということを意味しないということが重要です。



一見細かい知識を問うように見える問題でも、基本の理解さえあれば、そこから推論することによって正解にたどり着くことは可能です。
例えば、平成19年度の刑法の問題(刑事系第8問)は法定刑絡みの問題で嫌だなぁと思われる方は多いと思います。この問題は誤っている肢がどれかを問う問題です。
で、

窃盗の正犯を幇助した者について,懲役刑を選択した場合,処断刑は,1月以上5年以下の懲役となる。

という肢が誤りになります。どこが誤りかわかりますか?


この正解を導くたのの知識は、

  1. 幇助犯は正犯を減軽した刑が科されること(刑63条)
  2. 窃盗の懲役刑に短期が定められていないこと(刑235条)=下限が1月であること(刑12条1項)
  3. 有期懲役が減軽されると短期・長期ともに半分になること(刑68条3項)

この3つの知識があれば正解できます。
この問題は法定刑まで暗記しないとダメな細かい知識問題だとも思える。
しかし、そうじゃないのです。



幇助犯について勉強したなら、幇助犯がどういう法的効果を持つのかということをまず知っておかなければ勉強をしたことにはならないでしょう。論点は重要だが、幇助の因果性の論点を誰よりも知っていても、幇助は正犯の刑を減軽することを知らないとすれば何の意味もない。多分、教授が嫌う論点主義はこういうのだと思われます。


では、すべての犯罪について法定刑を知らなければならないのかというと、決してそんなことはないと思います。
この問題でも、きちんと窃盗は有期懲役で10年以下、または罰金50万円以下と知っておくことを要求しているわけじゃなく、窃盗罪に短期の刑が法定されてないということだけ知っておけばいいわけです。
窃盗罪は論文でもものすごくよく問われる犯罪です。論文を書くときなどにもよく窃盗罪の条文を参照しますよね。そういうとき、または基本書などで、窃盗罪の短期刑の定めを見たことがある!、あるいは聞いたことがある!という経験はないはずです。そんな定めないんですから。
そして、その経験を信じて推論する。勉強が少し進んでいる方なら短期刑が定められている刑は重大犯罪が多かったなということも知っていると、よりその推論に基づく正解にたどり着くはずです。
すなわち、窃盗罪に短期刑は定められていない、ということに。
逆に、窃盗罪に短期刑が定められていると推論する方が難しいはずなんです。


では、例えば「10年以下の懲役」のような場合の下限は何か?
これは有期懲役という意味を知っていればわかることで、これは基本事項でしょう。これを知らなければ、有期懲役を知らないということと同じですから。
つまり、有期懲役は基本的に「1月以上20年以下」です(刑12条1項)。有期懲役の基本事項はこれに尽きるとさえいえるんじゃないでしょうか(もちろん「懲役」の意味を知っていることが前提ですが)。
幅広い知識が必要とは言っても、1つひとつ押さえる知識はそれほど多くないといえます。
有期懲役は「1月以上20年以下」、というたったそれだけの知識があるだけで有期懲役を知っているかどうかが変わります。特に、刑の加減の問題になると、刑の下限が何なのかが重要になってくるので、たった「1月以上20年以下」という知識でも重要なわけです。
が、択一に落ちた方のパターンは、

有期懲役?あぁ、刑期に上限がある懲役。みたいな?

こんな感じになります。そのため、こういう曖昧な知識のままこの問題と戦うと負ける可能性が高まります。
前回の日記で言った、パターンがこれです。
択一合格レベルだと暗記・理解度70〜90%のような基本的な事項が、択一不合格者の場合は40〜60%だったりする例がこういうことです。


そして、有期懲役について少なくとも下限があってそれが「1月以上」ということを知っていれば、次に減軽の方法をあてはめればいいわけです。


刑の減軽が問われること自体はそれほど多くないものの、刑の減軽に関わる問題はよく勉強しているはずです。中止犯、過剰防衛、心神耗弱などです。これらの要件論はよく論点で勉強するわけですが、それが問題とされるのはその法的効果が刑に重大な影響を与えるからなわけで、これが要件だけじゃなく、効果も意識して勉強しろと言われる所以でもあるわけですね。


ですから、減軽の方法ももちろん基本事項です。が、別に難しくないですよね。
有期懲役なら、その刑の短期・長期を半分にするってだけです。ですが、これを知らない人は減軽について全く勉強をしたことがないに等しいということになります。
そのため、減軽の方法も多くのことを暗記しなければならないわけじゃないにもかかわらず、たったこれだけのことを知っているかどうかで、正答率が全然変わってくるわけですね。


結局、この問題は、有期懲役と減軽の方法の意味を知っていれば、ほとんどの人は解ける問題だったということになります。
そして、ここで問われた有期懲役と円形の方法の意味は決して難しいものでもなく、しかも暗記しておくべき量も多くないことがわかります


以上から、必要とされる知識は必ずしも多くないという意味が理解できたと思います。
長々具体例を挙げて説明しましたが、要するに、間違っても、この問題の復習の際に
「法定刑すべて暗記する!」
みたいな発想になってはいけない。そう言いたかったんですね。
要はポイントということになります。
そして、この問題では問われているテーマは刑期とその減軽の方法の関係といったように広く捉えて復習すべきだと思います。減軽は有期懲役の場合が多いと思いますが、では無期懲役ではどうなるか、死刑ではどうなるかくらいは常識として知っておかなければならない事項です。尊属殺違憲判決の事案をきちんと読んだ人ならそのそんなの当たり前だろと思うかもしれませんね。
もちろん、その分暗記の量は増えるわけですが、減軽の方法が有期懲役の場合だけといった保障はないわけで、むしろ有期懲役から出たなら次は死刑とか無期か、という具合で復習した方が別々に復習するよりも効率が良いと思います。
しかも、刑期と減軽の関係なら、2つ覚える条文が5つくらいに増えた程度のことで、内容も難しいものではありません。このようにテーマをひとくくりにして苦手分野は復習した方が暗記だけじゃなく、理解することにも役立ちます。


範囲は広い。けれど、1つひとつの覚えるべき基本事項は必ずしも膨大で、かつ、難しいというわけではない。
このことは俗に「浅く広く」のように言われますが、その通りだと思います。


完璧な知識に勝る択一対策はないわけですが、すべて暗記することは事実上不可能です。
逆に中途半端な知識の暗記だけして、理解しない人間は合格させたくないというのが考査委員の気持ちだと思います。
前回の日記にも書きましたが、「試験は暗記じゃない」と言われることがあります。
そのメッセージのような問題があります。平成21年度の刑法の問題(刑事系第2問)です。
刑法の因果関係の問題なんですが、判例の事案が何個かあって、そのうち因果関係に関する見解として挙げられた内容からすると因果関係がないとされるものはどれかを問う問題です。
挙がっている見解は

行為自体の危険性が結果へと現実化したものと認められる場合には,行為と結果との間の因果関係を肯定し,そうでない場合にはこれを否定する。行為の危険性は,行為時に存在した全事情を基礎に判断する。

というものです。
「行為自体の危険性が結果へと現実化したもの」という部分をみて、
「あぁ!これは判例の立場とされている危険の現実化説だな!」
と考え、後は判例で因果関係が認められなかった米兵ひき逃げ事件の事案を選べばOK。
みたいに考えた人は少なくなかったんじゃないかなと思います。
自分も、当時本試験を受けながら一瞬そう考えていたことを今でも覚えています。


しかし、これは中途半端な知識(暗記)に頼ったために間違えてしまうという典型例です。


そもそも、どこに判例の立場として見解が挙げられているのか?これは完全な思い込み。
確かに、山口先生など、最近多くの学者が危険の現実化の有無で因果関係の有無を判断するのが判例の立場とか言われているけれども、そういう知識に引っ張られては問いに答えたことにはならない。
問題は

因果関係に関する次の【見解】に従って後記1から5までの各事例における甲の罪責を検討した場合,甲に( )内の犯罪が成立しないものはどれか。

なのです。
この問題における見解を純粋に考えて、そこから事案にあてはめて答えるという、現場思考の処理こそがこの問題で問われていたわけですね。


また、詳細に理解していれば、この見解は「行為の危険性は,行為時に存在した全事情を基礎に判断する。」とするだけで、行為後の事情をどう評価するかは書かれていません。
そのため、結果をみて行為時の事情がその危険を生じさせるかどうかという観点だけで判断しなければならないことになります。つまり、ここでは死因と行為を見ていけばいいわけです。
普通に、この問題に向き合って考えると実はすげー簡単です。


ここで、肢の実行行為と、結果発生の原因、問われている犯罪をみればいいわけです。
1は、問われているのは傷害致死罪、行為が転倒させる行為、死因は心臓発作を起こしやすい状況にあった乙が転倒したショックで心臓発作を起こしてため。
2は、問われているのは傷害致死罪、行為が放置すれば死因する危険のある頭部外傷行為、死因は前記行為
3は、問われているのは監禁致死罪、行為が夜間、見通しの悪い道路に無灯火のまま駐車させていた車のトランクに監禁、死因は第三者の不注意でその車に追突したことによる傷害
5は、問われているのは自動車過失致死罪、行為がそのまま放置すると死亡するくらいの頭蓋内出血の傷害行為、死因は前記傷害の悪化
いずれも行為時の事情を基礎に考えると、行為と結果発生の原因は結びつくことがわかります。
3も判例ですが、事故が起きる可能性のある場所に、しかも無灯火で駐車していたので、この行為と事故に因果関係があるとされています。そのため、行為時の事情を基礎とすると、そんな事故を発生させる危険がある行為をして、その通り危険が現実化したとされています。
少なくとも、「前記○○が原因で」結果が発生したと書かれているものは、読解力だけでも因果関係の有無は明らかだったりします。


しかし、
4は、問われているのは傷害致死罪、行為が放置すれば死亡する程度の頭蓋内出血の傷害行為、他方、死因は第三者の放火による火災によって「焼死した」と書かれてあります。
行為者のした行為は頭蓋内出血による死亡の危険性のある行為。しかし、死因は焼死。頭蓋内出血による死亡とう危険は現実化されていません。現実になった危険は火災による死、すなわち焼死。
ということで、どう考えても、4が因果関係の否定される事例だとわかります。


こうやってみると、すごい簡単だと思います。
しかし、中途半端な知識に引きずられた結果、こんな簡単な問題も間違えたりすることもあります。


どこのロースクールでも勉強するような判例知識は知らなければなりません。基本判例は基本事項として暗記とともに理解することが要求されます。
しかし、判例ではよく結論のみ覚えておけばなんとかなると思っていると、こういう問題で足元をすくわれることになります。


では、どうすればいいのか?
事前準備で対策することができることは、暗記とともに、正確な理解をすることです。
例えば、この問題でも、判例の立場はどういうものなのか?ここで挙がっている見解はどういう立場なのか?
こういうこともセットで理解することが試験対策として重要なんですね。これは別に択一対策に限らず、論文対策にもなります。実は、理解することにも時間を使うというのは、一石二鳥なんですね。もちろんテーマによります。
先ほどの有期懲役や減軽の話と異なり、論文でも出したいと思っているテーマは多少時間を使って理解を深めることも大事です。これは択一対策でもあり、論文対策にもなります。同じ法律学の試験なのですから、テーマによって勉強の仕方を工夫することは効率的な学習という観点から重要です。
逆に、すべてこのような時間をかける勉強法はしてはなりません。時間切れになって、過去問も十分に回せないまま本試験突入とかになります。はい、わたしがそうです。


刑法における因果関係は重要なテーマですよね。そして、刑法における基本中の基本事項ともいえる因果関係はそれだけ暗記すべき量も増えます。同時に、理解すべき内容も増えます。
しかし、それでも暗記できないほどの量じゃありません。こういうときはキーワードを覚えるんですね。というか、自分はそういうやり方でしか覚えられませんでした。
例えば、因果関係だと、「客観的帰責」とか、「適正な処罰範囲を画する」とかを趣旨に使ってとか、考え方は「条件関係」を前提にとか、昔の学説は「判断資料」と「判断基準」で「主観」「客観」「折衷」とかあったとか、とかいったポイントだけいつでも思い出せるようにしてました。



あと、突っ込んだ話ですが、判例の立場は学説上、条件説と言われてきましたが、最近は客観説だとか危険の現実化の有無によって個別具体的に判断しているとか、いやそれは客観的帰属論の範疇で考えられるとか、色々言われてるわけです。
これは深みにはまってはいけません。そもそも、学者が好き勝手「判例は云々」と言っているに過ぎないわけですから。
ここで押さえるべきは、「学説上、判例の位置づけには争いがある」とだけで足ります。
しかし、逆に判例は主観説なんてとっていないわけですよね。そういう位置づけは押さえないと、判例の事案を考える上で正確な理解ができません。
とはいえ、ここでは判例は事案との関係で判旨を理解し、学説は学説で押さえておく。そういった判例と学説の峻別した理解をまずしておいた方がいいでしょう。
その上で、色々成り立つ考えがあるが「学説上、判例の位置づけには争いがある」という理解でいいんじゃないでしょうか?あとは自分の使う基本書の考えに乗って論文を書ければ試験対策としては十分じゃないでしょうか?
たまにこういう特殊なテーマはあります。学説と判例が乖離したままって問題。例えば、民法瑕疵担保責任(履行認容受領で特定の時期を変える判例はちょっと特殊です)や憲法適用違憲なんかです。
重要テーマですが、議論が止まってたり、逆に始まったばかりなんてものもあります。
そういうのもあるので、一般的な基本書や判例集にない部分はあまり悩まない方がいいと思います。択一・論文ともに、この問題のように現場で考えて、論理的に処理する練習をした方がいいと思います。


ちょっと、話はそれましたが、逆から考えると、悩ましい部分に時間をかけないで、事前準備として暗記・理解しなければならない範囲を限定して、あとはその知識を使う練習に使った方がいいということです。
間違っても、この刑法の問題を見て、客観的帰属論も知っておくべきだと考えて、中山先生やエンギッシュの論文集などを読み出してはいけないということです。試験対策でそんなことする人はいないと思いますが……
 

■コア・カリキュラムの利用法

論文でも出したいテーマというものがあるといいました。
が、「それはどれやねん?」とツッコみたいところだと思います。
それは、例えばコア・カリキュラム民法なら、「具体例に即して説明」や、「判例・学説の考え方の対立とその問題点を説明」などが書かれている事項です。
これらの記載がある事項は単に暗記したことの説明じゃなく、法的な事案処理や、法的な問題の処理を具体的に要求される事項だということを意味するので、択一にとどまらず論文でも問われやすいテーマだといえます。
今年の問題も、実際にこういう事項から問題が出題されています。


辰已の西口先生は別件逮捕は出ないとおっしゃっていましたが、自分は、刑訴だけコア・カリキュラムに沿った論文対策をしていたので、別件逮捕や余罪取調べの限界等は「絶対出る!」と確信してました。
こういうテーマを酒巻先生や百選で調べたりしてたら、別件逮捕は実体喪失説を中心に議論してるってわかると思います。去年出た事例研究の刑事訴訟法の問題でもそうでした。しかも、この演習書は裁判官等の実務家が執筆していて、今は学説も実務も実体喪失説を中心に別件逮捕を考える点で共通しているんですね。
そういうのも知っていたので、わざわざ設問で逮捕と逮捕後の身柄拘束の適法性を分けていた今年の問題は、こういう学説や実務の状況に照らしても至極当然なものだっとなというわけですね。


しかも、別件逮捕という論点の性質上、それと関連する余罪取調べの限界、自白の証拠能力と違法な別件逮捕なんかでも、別件逮捕は何回も出てくる問題で、実際にコア・カリキュラムに沿って勉強してると何回も出てきます。
色んな角度から問われる性質のものというのもあって、こういう問題が論文で出ないわけがないと確信していました。


これは一例ですが、要求される内容でどれが論文テーマかだいたいわかると思います。
そして、コア・カリキュラムに載ってある事項をすべて網羅すれば択一・論文ともに完璧になります。


以上で、基本事項の暗記・理解の内容や範囲について具体例を挙げて書きましたが、過去問とコア・カリキュラムを使えば、要領よく暗記すべき基本事項は把握できます。


そして、繰り返しになりますが、苦手分野は間違えた問題だけじゃなく、そこで問題となっているテーマ全体について復習した方が後々のことを考えると効率的です。

■暗記方法について

基本事項の暗記を、①どのように選んで、②どのように行ったのかについて、①については以上の通りです。
で、冒頭で言った通り、自分はほとんど意識して暗記はしていませんでした。


しかし、あたくしのようなクソヴェテにならないためにも、意識して暗記はした方がいいんじゃないのかと考えています。


そこで、これは合格体験記じゃなく、不合格体験をした自分が思う、早くこうした方法で暗記を実戦すればよかったと思うことについて書きます。

◇15秒待つ暗記方法

1つ目は、15秒まつ暗記方法。
これは、短期記憶に情報が保持される時間はかなり短く、通常15秒(長くても30秒)程度で、それを超えて記憶を保持しようとすれば、情報を処理せざるを得ないという脳の仕組みを利用した記憶方法。
この方法には4つの基本技があるとされています。
詳細は以下参考。
http://readingmonkey.blog45.fc2.com/blog-entry-494.html

そのうち、①「聞く→言う」という方法と、②「聞く→書く」という方法は、1人では使いにくい。
残り2つは、③「読む→書く」という方法(遅延写経)と、④「読む→言う」という方法(時間差音読)です。
キャレルではしゃべることは難しいので③の遅延写経という方法になると思います。
これは、覚えたい情報を読んで(定義、要件等)、すぐに書き写すのでなく、15秒間待ってから、何も見ずに書き出す。これだけ。
④の時間差音読は、覚えたい情報を読んで、すぐに発音/発声するのでなく、15秒間待ってから、何も見ずに唱えるというもの。


ただ、脳科学者の茂木健一郎先生によると、暗記は色んなところから脳に刺激を与えた方法がいいとのことでなので、どうせなら③と④を組み合わせたやり方をすればいいんじゃないかと思っています。
つまり、

  1. 覚えたい情報を発声しながら読んで
  2. 15秒間待って
  3. 何も見ずに発声しながら書き出す

これなら、インプットの時点で目で見たもの(視覚)を口に出すことでその声は耳にも届く(聴覚)ので黙読よりも脳は刺激される。
次に、アウトプットの時点も、同様に発声し、その声を聞きながら(聴覚)、手で書くこと(触覚)で同様に脳が刺激される。


覚え方はこれがいいんじゃないかなと。

◇1、3、7のタイミングで復習する

次に、これを実戦する計画です。
暗記ばかりではダメということは何回も言った話です。
そうなると、計画的に、かつ、効率的に実戦しなければなりません。
ポイントは、復習のタイミングです。


この点については、以下が参考になります。
http://readingmonkey.blog45.fc2.com/blog-entry-499.html


これは結構メジャーな考え方だと思います。
一度に覚えるのと、分けて覚えるのでは、分けて覚えるほうが効果が高く、しかも長く続く。
そして、同じく学習を分散するにしても、その間隔を次第に広げる方が効果があることが知られている。


そこで、1日後、3日後、1週間後……という間隔で復習する。
上記の暗記方法をこの方法で復習する。
覚えることが少なくないので、忘れていたものを中心に繰り返すようにする。
Anki(http://ankisrs.net/)というソフトを利用すれば、より効率的かなと考えています。
以下、参照。

35ミニッツ・モジュール

 復習の間隔を次第に広げていくやり方のひとつで、シンプルなのはDWMシステムである。
 これはDay-Week-Monthの略で、1日後、1週間後、1ヶ月後に復習するというもの。
 単語や構文を覚えるのにカードを使うなら、学習/復習した日付を記入して、箱に並べておいて、上記の復習スケジュールで見直す。
 
 少々面倒だが、機械的なスケジュールなので、プログラミングをかじった人なら、ちょっとした仕掛けで復習支援環境を実現できるだろう。
 お仕着せのものもある。
 Spaced Repetitionをとりいれたソフトで、一番有名なのはAnki(http://ankisrs.net/)だろう。Windows、Mac osx LinuxFreeBSD、それにiPhoneノキアのMaemo(マエモ)、Androidで動くソフトがダウンロードできる。オンライン版もある(http://ankiweb.net/account/login)。


 さて、DWMシステムを組み入れた35分間で1セットの学習モジュールとしたものが、35ミニッツ・モジュールである。35分間を以下のように使う。
 
  0〜20分……新規項目の学習
 21〜24分……定着のための小休憩と復習の準備
 24〜26分……1日前の学習項目の復習
 26〜28分……1週間前の学習項目の復習
 28〜30分……1ヶ月前の学習項目の復習
 30〜35分……今日の学習項目の復習
 
 35分間という時間設定は、集中力が維持できる時間とが新規項目の学習に全学習時間の60%(つまり復習には40%)を割くことから算出されている。
 暗記ものの学習スケジュールを組み立てるのに利用できる。
http://readingmonkey.blog45.fc2.com/blog-entry-499.html


また、思いつくまま書き連ねましたが、参考になれば幸いです。