【司法試験】役立つ演習書、参考書、判例集――刑事訴訟法編②【参考書】

■前回の記事

前回に引き続き、試験に役立つ刑訴法の演習書、参考書の紹介です。

■刑訴法の演習書

事例演習刑事訴訟法 (法学教室ライブラリィ)

事例演習刑事訴訟法 (法学教室ライブラリィ)

古江褚隆先生の演習書です。
短い事例ですが、基本論点を掘り下げて理解するのにものすごく役立ちます。
演習書は、前回紹介した事例研究であてはめ中心の演習、本書で基本論点の復習をすることで完璧でしょう。もちろん、実際に答案を作成して(少なくとも答案構成をして)使ってください。
これまで田口先生などの基本書が受験界では一般的でしたが、新司法試験になってガラッと変わったことが本書でも痛感できるはずです。
なんといっても、判例の分析が秀逸です。しかも、限られたスペースで、最先端の学説などもフォローしており、特に酒巻先生の法学教室での連載(法学教室連載・283号〜306号)がよく引用されて出てきます。
論点については本書と、酒巻連載を参考にすれば必ず強くなります。
また、本書は以下で紹介する三井先生の判例集にも対応しているので、判例集を使うことで理論面のみでなく、あてはめにおいても強くなることが可能です。

■刑訴法の参考書

刑訴法の基本書は、いまいち決定版が存在しません。
どれももう1つな感じです。
が、特にこだわりのない方なら、とりあえず、有斐閣アルマがおすすめです。

刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

執筆者が元試験委員ということもあって、内容的には信頼できるものに出来上がっています。
しかも、薄いのでサクッと復習するのにも向いています。
ただ、そのデメリットとして、具体的事例へのあてはめに関しては別に判例集や演習書で確認していかなければなりません。が、基本書は理論面の基礎知識をマスターすること、具体的あてはめは判例集などを使うといった目的別に考えれば問題ありません。


刑事訴訟法

刑事訴訟法

上口裕先生の刑事訴訟法です。
丁寧に基本概念などの説明がなされており、復習用の参考書としては使えます。
ただ、学者本だけあって、実務上重要な考えに反対する自説の展開が少なくなく(例えば、訴因の識別説の考えなど)、好みが分かれるところもあります。
ですが、本書をしっかり読み込めば知識面で劣ることはないでしょう。
もっとも、効率的に知識を埋めるのなら、復習用に用いることをおすすめします。


条解刑事訴訟法

条解刑事訴訟法

復習用の参考書としてはこれ以上のものはないでしょう。めちゃくちゃおすすめです。条解シリーズの刑法よりも使えます。
が、値段が高いので余裕がなければ図書館に通うか、借りましょう。
何と言っても執筆者が裁判官などの実務家が多数で、実務面から必要十分な情報が載っています。
コンメンタールということもあって、苦手な条文について本書を参照すれば、克服できること間違いなしです。
例えば、六法で刑訴法222条を読んでみましょう。
初学者だと、これだけじゃ「は?」みたいなことになるはずです。
しかし、本書〔第4版〕の422ページ以下を見ればわかりますが、準用規定によって具体的にどう規律されているのかがわかります。ちゃんと、読替え規定を逐一書いてくれてます。
こういうのは自力でやれってことで、基本書とかには総論的なことしか書かれてなかったりするんですね。でも、ここにある読替え規定を読む方が、どんな基本書を読むよりも重要で、しかも捜索押収等の理解が進みます。
択一に強くなりたいと思う方には特におすすめです。
もちろん、本書も復習用に有用という意味で、通読はおすすめしません。
刑事訴訟法講義

刑事訴訟法講義

実務を意識した基本書である前田雅英=池田修・刑事訴訟法[第3版]を使用している人は、独自色の強い部分、例えば自白の補強法則などを条解刑訴法で補充すれば完璧でしょう(強制処分と任意処分の考え方については酒巻連載で補充するのがいいでしょう)。


入門刑事手続法 第5版

入門刑事手続法 第5版

試験委員の酒巻匡先生の著作でもある「刑事手続法入門」です。
入門書だけあって、わかりやすく、しかも細かい知識については択一対策になる情報が必要最小限に詰まってあって、刑訴法が苦手という人はとりあえず本書をざっと読むだけで、次へのステップへ進む手助けになること間違いなしです。
去年刑事系15位で合格した人も本書を択一対策として使っていたらしいです。
何と言っても、本書は学者によるものですが、実務への配慮が十分になされているということが特徴です。
学説等には突っ込まず、論点については判例の立場を中心に簡明な説明にとどめている点で、まず理解して記憶すべき点が明確です。
また、入門書ということもあって、重要な法律用語については、別途四角で囲んで解説してくれています。

■刑訴法の判例集

百選は当然必須ということで、それ以外の紹介です。

判例教材刑事訴訟法 第4版

判例教材刑事訴訟法 第4版

刑訴法の論文は事実がたくさん散りばめられています。その中から問に応じた法的論点を抽出して、規範、あてはめ、結論を示すことが求められます。
本書の判例集はそういった面から、かなり使えます。
なにより、本書に載ってない判例以外からは問題が出ないというくらいにたくさんの判例を扱っています。
しかも、事実がかなり詳細で、しかも判旨も単に規範部分だけじゃなくあてはめ部分もしっかり載っています。
本書も復習用として使用する分にはかなり有用です。上述の通り、古江褚隆先生の演習書が本書を参照しているので論点の学習のみではなく、本書によりあてはめについても学習ができます。
ただし、通読には向かないので使い方には注意です。