【勉強の記録】出そうだゼ!債権者代位権と民事手続絡みの問題。の巻【残り351日】

自称クリリンです。


今日も、法学教室の演習と解いてた。
債権者代位権と民訴の関係を問う問題。
①被保全債権が債務者の有する債権よりも小さい場合の訴訟物の範囲
②代位債権者が和解をすることができるか
③判決確定後に、債務者が代位債権者が当事者適格を欠くとして代位訴訟の判決効を免れることができるか
といった問題。


「なかなか復習にはいい問題だなぁ」
とか思ってたら、所々「ん?」とわせる箇所があった。


慶応大の春日偉知郎という教授が作ったやつ(法教332号168頁)なんだけれど、債権者代位訴訟において

①訴訟物は、代位行使される債権の全額か、それとも被担保債権の額に限られるか。

えっ?ひ、被担保債権?
保全債権と勘違いしてない?それとも俺の理解が間違っていたのか?
潮見債権総論や内田民法Ⅲを確認してみるが、いずれも被保全債権としか書かれておらず、被保全債権は、債権者代位権の行使によって保全される債権で、被担保債権は、担保される債権という旨の記載しかない。
ちなみに、有斐閣法律学小辞典によれば、「担保」とは

債務者が債務を完全に履行しない場合に受ける債権者の危険を考慮して,あらかじめ債務の弁済又は給付の履行を確保し,債権者に満足を与えるために提供される手段

とされている。
確かに、債権者にとって、債権者の一般財産が、債権の最終的な引き当てになっているという意味で「担保」ということは、比喩的にはいえる。
しかし、債務者の資力のあるうちから、あらかじめ危険を想定して行われるわけではない債権者代位権では、債権者の保全される債権を、特定の債権者の満足を目的として「担保される債権」ということはできない。いやそれどころか、そもそも責任財産の「保全」の制度である債権者代位権は「担保」権ということはできない(相殺による「事実上の」優先弁済効力が認められているが、それは「事実上の」効力にすぎず、債権者代位権は特定の債権者のための制度ではない)。


そういう不毛なところで、そういう誤記を発見すると、「こいつ本当に信用できるの?」って不安になり、げんなりした。


そのような不安のまま解説を読む。


そもそも、債権者代位権の訴訟物自体は、債務者の第三債務者に対する債権である点で一致しており、したがって、この設問の意味を善解すると、その範囲はその債権全額なのか、被保全債権の額に限定されるのかという趣旨と捉えることはできる。
債権者が債務者の財産権に介入する制度である債権者代位権の行使における介入対象は、債権者の管理権の範囲内、すなわち債権額の範囲内で行使すべきとされている。
そうすると、
債権者代位権の対象となっている債権(被代位債権)の額>被保全債権の額
ということがあり得るので、一部請求の問題が生じる。
既判力の範囲を一部明示の有無で判断する判例においては、訴訟物たる債務者の債権額のうち被保全債権の額のみを行使対象とすることを債権者代位訴訟において明示しなければ、残部請求ができないことになる。
しかし、請求原因において、①訴訟物の対象たる債務者の債権(被代位債権)と、②債権者の債務者に対する債権の成立及び額は記載される。②は債権者代位権を行使するための当事者適格を基礎付ける必要があるため要求される(訴状の当事者欄と請求原因①を対比すれば、請求者が第三者であることが必然的にわかる)。
よって、債権者代位権の行使においては、必然的に明示の一部請求になる。


という理解をしていたわけだが、以上の説明なしに春日教授の解説には

代位債権者は必ず一部請求であることを明示すべき事になるが、なお、これを徹底できるという保障はないであろう。

という。いや、請求原因は必然的に要求されるわけで、どういう理解から「保障はない」というんだ?


その挙げ句、訴訟物としては、被代位債権(全額)の1個の債権と解するのが妥当という。
この論述の部分には、参考文献が挙げられていないので、春日独自説なのであろう。参考文献がないということを前提にすると、そのような理解を一般的にはしていないからだろうと推測される。



元裁判官の遠藤賢治先生による法学教室の演習では、極めてオーソドックスな解説で、こういった独自説なんかがなかったので、スイスイ読み進めることができたのに、こういう独自説の押しつけ、しかも判例・通説の理解を無視した学者の自慰行為を展開されると、めっさげんなりするわぁ…



はぁあ。勉強の計画変更も考えようっと。